トパーズの憂鬱 (下) 2
美砂子は悲しい表情を浮かべた。文芽は深刻な表情を浮かべていた。
「どうして。そんなこと言うの?」
「いや、なんとなく」
どうやら、美砂子はこれまでの
「和義は私のために」
「ごめん。嫌がらせは無くなったんだよね?」
「うん」
美砂子は首を縦に振る。文芽は考え込んでいた。
「城内さんを問い詰めた後に、嫌がらせがなくなっている。これがどうにも可笑しくない?」
「和義が怪しいってこと?」
美砂子は文芽を見つめる。
「
「そうだけど」
美砂子は城内の様子を思い出しているようだ。
「盗聴器を仕掛けたのが、城内さんじゃないなら、私か幹正くんが怪しいことになるよね。けれど、私も幹正くんもやっていないし」
美砂子は文芽の言葉を真剣に聞く。文芽は美砂子を思って言っているのだろう。
美砂子はそれが解っているからこそ、文芽を責めることができない。
美砂子は混乱し始める。
「じゃあ、もし、和義が本当にやったとしたら?理由は?それをする理由ってある?」
美砂子は涙目になっていた。自分のパートナーが盗聴していたなんて恐ろしいだろう。
もし、本当に和義がやったとしたら、背筋が凍る。和義の目的は何だろう?
「あくまで予測だからあれだけど。由利亜ちゃんは美砂子と和義くんの子供じゃないじゃないだから、その」
「和義が由利亜を煩わしく思ってるってこと?」
「……解らないけど、独占欲というか。美砂子が由利亜ちゃんに付きっ切りだし」
文芽はそんなことを言いたくなかっただろ。
美砂子は益々、顔を青ざめた。和義が自作自演で嫌がらせをやっていたかもしれない可能性。
私は思い出の途中で手を離した。
私は額に汗をかいていた。ひとまず、休憩しよう。
私は台所に行き、冷蔵庫から水のペットボトルを取り出し、それを飲む。
和義が美砂子に嫌がらせをしたかもしれない。
後ろから押してきた女性は一体、誰だ。
私は和義の自作自演の可能性を、全面的に否定できない気がしてきた。
どうして、美砂子にこんな試練が起こるのだろう。
二股をかけられ、掴んだと思った幸せはまがい物だったかもしれない。
辛い過去を見るには覚悟がいる。私は深い深呼吸をした。
洗面所に行き、手を洗う。時刻を確認すると、時刻は午後5時40分だった。
秋の日は短い。すっかり部屋の中が暗がりになっている。
私は、部屋の電気をつけた。自然と食欲や眠気は無い。
私は再び、白い手袋をして、ネックレスに触る。
ゆっくりと見えてきた思い出は、美砂子と和義が居間で話している場面だった。
文芽と美砂子が話していた時から、どのくらい経過しているのだろうか。
美砂子が和義を見る。和義が真剣な表情で話し始めた。
「美砂子。あの、聞いてくれ。犯人は
「え?なんで?どうして?」
美砂子は目を見開いた。和義の言葉に驚きを隠せないようだった。
今度は和義が文芽を疑っている。
「いや、幹正が言うにはさ。だって、夏菜子じゃないし。それに幹正は違うし。それに由利亜の本当の父親の叶井遊作もありえないだろう。だから」
「ちょっとめちゃくちゃじゃない。証拠はあるの?」
「俺はまともなことを言ってる」
和義は冗談を言っているようにも見えなかった。
美砂子は和義を睨む。和義は美砂子を
美砂子はそれを
「ねぇ。幹正くんの言っていることは本当に正しいの?」
「ちょっと待て。俺の親友を疑うのか?」
「和義だって私の親友を疑っているじゃない?」
和義は黙る。美砂子は涙目になっていた。美砂子は少し震える。
和義は口を開いて言う。
「俺は、美砂子の親友の文芽さんを疑っている」
「……ひどい」
「盗撮や嫌がらせしているほうが酷くないか?」
和義は真剣に言っていた。美砂子は涙を流し、嗚咽し始める。
和義は美砂子の肩を抱こうとするも、美砂子はそれを払い、再び、睨んだ。
「一人にさせて」
「……俺は文芽さんが犯人だって証拠を見つける」
「勝手にすれば」
美砂子は和義を置いて、部屋を出て行った。
二人の関係に完全に亀裂が入っていく、嫌な音が聞こえる感じがした。
これが決定的な出来事なのだろうか。
美砂子はとぼとぼと、道路を歩く。行き交う人の雑音にも目をくれることはなく、下を向いている。
すれ違う人に肩がぶつかった。
「おい」
「………」
美砂子はぶつかった相手から声を掛けられた。美砂子は空を見えている。
ぶつかった男性は美砂子を見て、言う。
「お前、どうしてくれるんだよ?」
「………」
美砂子は目から涙を流していた。美砂子は男性の顔を見ることなく、無言だった。
「何とか言えよ。泣いて誤魔化すなよ」
男性は美砂子の肩を掴む。その瞬間、男性の手を誰かが掴んだ。
トパーズの憂鬱 (下) 2 了
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