第450話華音VS日本トップクラスの猛者(1)

華音が警察庁の道場に入った瞬間、待ち構えていた選手たちは、どよめいた。


「おい・・・潮崎師匠も、柳生隆も一緒?」

「霧冬先生の隣にためらいもなく座るし」

「でも、15歳だよな、中肉中背ってとこだろ?」

「それがVIPの警護、大丈夫か?」


など、首を傾げる選手たちも多い中、華音を呼びつけた柳生霧冬が、道場の中央に立った。


「一度、華音を見せておこうと、思うたんや」

「お前たちも、気合入れてやらんと、殺されるで」

「まあ、今の華音には潮崎も隆も、かなわん」

「この俺も、つい先日、殺されかけた」


ますます、驚きの顔で華音を見て来る選手たちではあるけれど、華音は柳生霧冬が気に入らない。

「殺されかけたって・・・襲ってきたのは自分でしょ?」

「万葉集の憧れの大先生に逢う、その寸前に品が無い」

そんなことをブツクサと言うものだから、隣で聞いている潮崎師匠も柳生隆もプッと吹いている。


「さて・・・」

華音の文句など、興味がない柳生霧冬が華音を手招き。

華音も「しょうがないなあ」との顔で、道場の中央まで進む。


柳生霧冬は「まずは・・・空手でいいかな、身体ほぐしで」と、つぶやいて、中量級の選手も手招き。

その中量級の選手は、少し首を傾げ、華音と対峙する。


柳生隆

「あいつは、国際大会で2位、かなり強いよ」

潮崎師匠

「まあ、怪我させんように、華音はやるやろ」


柳生霧冬は華音に声をかけた。

「まあ、壊さない程度に」

華音は、まず中量級の選手をチラッと見て、素直に頷く。

「そうしますか、飛ばすくらいに」

しかし、そんなことを言われた中量級の選手は気に入らない。

その顔も、実に厳しいものになった。


「はじめ!」

柳生霧冬の合図で、試合が始まった。


・・・が・・・勝負は一瞬だった。


「グワ!グェ!」

あっと言う間に、中量級の選手、国際大会2位の選手が、腹を押さえて、のたうち回っている。


潮崎師匠

「あれは、空手が悪い、最初から反則の急所打ちを狙うから」

柳生隆

「華音は、一瞬でそれを読んで、身体をかわして、ボディーブブロー一発」

潮崎師匠

「華音は吹っ飛ばすつもりだったけれど、相手が悪質だったから、痛い目に」

柳生隆

「でも、手加減はしているよ、本気で打てば、血反吐だ」


さて、華音は、のたうち回る中量級の選手の後ろに立った。

そして助け起こして、背中のあちこちを指圧する。

「手加減したけど、こんな道場で、どうして反則?」


しかし、華音に完全に倒された中量級の選手は、息を吹き返したものの、まだ残る痛みと恐ろしさに、声が出せない。


柳生霧冬は、驚くばかりの選手たちに声をかけた。

「華音に反則は通じない、下手すれば返り討ちになる」

「それも、相当手加減して、こんな具合だ」

「さて・・・次は、大きな奴にするか」

柳生霧冬は、今度は体重が100キロを超えるような大男を手招きしている。

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