第451話華音VS日本トップクラスの猛者(2)

華音にあっさりと倒され、今も苦しむ中量級の選手を見ても、体重100キロを超える大男は、まだ華音の実力には納得していない様子。

それでも道場の中央に進み、審判役の柳生霧冬に確認をする。


「霧冬先生、さっきの選手は、気を抜いただけと思うんです」

「偶然、この華音って言うんですか?その突きが入ってしまって」

「単なるタイミングと思うんです」


柳生霧冬は、面倒そうな顔。

「おい、山上、お前だって柔道のオリンピック代表だろうが」

「そんな程度の眼力しかないのか」

「あれが偶然に見える?」


それでも、オリンピック選手の山上は納得しない。

「はい、偶然としか」

「ですから、私も本気を出すのにためらいまして」


そんな応答に華音が焦れた。

「霧冬先生、なんでもいいです」

「急に呼び出されて、宿題も終わっていないんです」

「なるべく早く帰りたいんで」


その華音の表情を見た霧冬が笑った。

「ああ、仕方ないな、じゃあ、これでもオリンピック選手や」

「壊さん程度にな」

「ああ、壊してもいいか、こんなんじゃオリンピックでも一回戦敗退や」

「日本の恥や」


すると、今度は山上が切れた。

「霧冬先生!何ですか!その言い方!」

「さっさと始めてください!」


霧冬は、「仕方ないな」とでも言いたげな顔。

それでも審判役なので、「はじめ!」の号令をかける。



その直後だった。

無造作に、襲い掛かるように伸ばした山上の手首を、華音は軽くつかむ。

と同時に、山上の身体全体が硬直する。


潮崎師匠が苦虫を噛み潰したような顔。

「あれは・・・痛いよ」

柳生隆

「華音を下手に挑発するから、あんな目にあう」

潮崎師匠

「俺は、三回極められ、三回とも脱出できなかった」

柳生隆

「華音は、あれでも人を殺せる」


山上の絶叫が道場に響き渡った。

「うわ・・・痛っ!・・・痛い・・・離せ!」

「このガキ!」

「おい!離せ!」

山上は、すでに顔が真っ赤。

脂汗を流し、硬直状態で何も動けない。


華音の表情は変わらない。

「山上さんって言うんですか?」

「本気を出してください」

「仮にもオリンピックの日本代表なんでしょ?」

「日本人全員の期待がかかっているのでは?」


その華音は、柳生霧冬の顔を見た。

「先生、決着つけていい?」

柳生霧冬は、「やれやれ」との顔。

「ああ、壊さん程度に、でも壊れたら直せ」


華音は、その返事で、フフッと笑い、山上の手首を捻った。

すると、山下の身体が一回転、畳に叩きつけられる。


「手首を捻っただけで・・・」

道場に驚きが広がる中、山上は畳の上で、失神状態になっている。

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