第445話国際テロ集団の戦略と華音の意外な言葉

柳生隆が話を整理する。


「現時点で、その集団のリーダーは不明」

「幹部集団は全て、各国軍の元トップクラス」

「その日本国内における兵隊というか協力者は、現職警察官と同じく現職自衛官で約500名」

「使用武器は、豊富な資金力に物を言わせ。全て最新鋭のものを大量に」

「それに加えて、細菌兵器、化学兵器、小型核爆弾も所有」

「目的は、まずは日本の潤沢な資金と高い技術力、そして優秀で従順な人間」

「時の日本政府から抵抗を受ければ、軍事力を行使し、占領」

「手に負えないのは、それを食い止めるべき警察や自衛隊に内通者どころか協力者が多数存在すること」


潮崎師匠の表情も厳しい。

「どこから狙うか、まずは東京になる」

「名古屋、京都、大阪、博多などを、ネットを使った遠隔操作のドローンで同時に爆撃することもありうる」

「そもそも、幹部クラスが日本に来るのは、爆撃後の混乱期になるかもしれん」

「それまでは、無人機攻撃の可能性もある」

「いや、確実に成果を獲得するには、それが人的リスクが少なく、安全」

「主に中東で実際に行われている戦闘方式になるけれど」


難しく深刻な話を、ほぼ黙って聞いていた華音が口を開いた。

「そうなると、最初の攻撃に使用するネットのアドレスを探ること」


会議室全員が、「それは当たり前でわかり切っている」という顔をするけれど、華音は、さらに言葉を続ける。

「付け込む手段は、ないとは言えないと思うんです」

「お金をもらって国際テロ組織に協力するとならば」


その華音の言葉に、柳生霧冬が反応する。

「と言うと、日本国内の協力者を探るとか?」

「それは、すでに始めていると思うけれど」


華音は首を横に振る。

「いや、そんな日本の動きは、国際テロ集団も当たり前に考えていると思う」

「だから、それが発覚しないように、何らかの措置もしてあるはず」

「内通者とか密告制度かな」


その華音の話に、シルビアが焦れた。

「華音、何が言いたい?」

「まどろっこしい」


華音は、そのシルビアを目で制した。

そして、話を続ける。

「僕が言いたいのは、その日本国内の警察官とか自衛官の統率が、どれだけ取れているのか、と言うこと」

「そもそも警察官といっても、特定の警察署に集中しているわけではないと思う」

「もちろん、自衛官も同じ、各地の駐屯地に分散していないと、妙な動きはすぐにわかってしまう」


柳生清が華音の言葉の意味を理解した。

「つまり、日本国内の協力者と言っても、一枚岩ではないはず」

「国際テロ集団がバラバラに声をかけて勧誘している」

「そうなると、必ず、どこかでボロが出る」

「せめて集団生活をしていれば、意思の疎通も統一もできやすいけれど」

「日本各地にバラバラに暮らして組織も別となると、頼るのはネットの文字と画像、音声のみ」

「各人の意識の差もあるだろうし、ただ金欲しさに飛びついただけの奴もいるかな」


柳生隆が公安庁と防衛省のNO2の顔を見た。

「まずは、それぞれの組織に内部告発制度を作って欲しい」

「わかりやすいのは、金回りが良くなった奴」

「スマホの着信を常に気にしている奴」

「それぞれの部署の武器弾薬庫の周りを必要以上にぶらつく奴」

「それと深刻な顔で、ヒソヒソ話をしている奴とそのグループ」


柳生隆の言葉に頷く公安庁と防衛省のNO2に、華音が一言。

「イエスの言葉ですけれど、砂の上に家にしましょう」


深刻な会議室は、華音の言葉に、全員が首を傾げている。

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