第446話華音の職務

「砂の上の家、つまり不安定な土台の上に家を建てた場合に、少々の揺らぎでも、その家は倒れます」

「まずは、その国際テロ集団が日本で使おうと思っている警察官や自衛官の連携を不安定で不確かなものにしておく」

「そうしておけば、実際の行動を起こす際に、ほとんど使い物にならなくなる」

華音は、そこまで話して、「砂の上に家」の話を一旦終えた。


柳生霧冬が、ニヤリと笑う。

「逆に、こっちからコントロールも出来る」

「国際テロ集団を騙り、偽情報を流す」

「活動内容、活動時間、集合時間も恣意的に誤った情報を流す」

「ネットを使っての情報伝達だから、一人でもつかまえれば、後は芋づるで捕縛が可能」


潮崎師匠も笑う。

「さすが柳生だな、忍者そのものだ」

「疑心暗鬼を作り出し、相手を混乱させるか」


華音は、それでも表情を緩めない。

「組織が崩れたとしても、一定規模のテロは起こせるだろうし」

「組織から離反するにしても、その人は結びつきが比較的薄い人」

「残った人の方が怖い」


柳生隆

「金で転んだだけではないかもしれない」

「その国際テロ組織の信条とかポリシーに賛同している場合もある」

「そのほうが、確かに厄介かもしれない」

「それを考えれば、一定の戦闘は避けられないか」


公安庁NO2が難しい顔。

「政権がどこまで戦う意思があるか」

「政権が戦う意思を決めた場合に、野党はどう反応するか」

「マスコミとか世論がどうなるか、それも不確定要素になります」


柳生霧冬がため息をつく。

「まあ、何でもかんでも戦争反対になれば」

「即座に降伏して、テロ組織に人の命も金も差し出すことになる」

「自衛のための戦争にも反対する、憲法学者も政治家も消えたわけではない」


防衛相のNO2は悲し気な顔。

「たとえば災害救助で命がけで働いても」

「その人たちにとって自衛隊は、あってはならない組織」

「食事をしていても、この災害時に食事などと、罵られる」

「災害救助期間中は、車で寝泊まり。食事も缶詰食」

「あからさまに、人殺し集団は出て行けとか、言われることも多くて」

「何より子供まで苛め対象、親の職業を隠さなければならない」


華音は潮崎師匠の顔を見た。

「師匠、どれだけ詳細な情報が集められます?」

「各国軍の元トップの、それぞれの戦闘力の詳細なもの」

「どんな体術を使うのか、武器は何が得意なのか」

「やがては地上戦で、一対一になった場合に、それを知っておきたい」


その華音の質問に表情をゆがめたのは、シルビア、春香、そしてエレーナ。

シルビア

「華音、まさか戦う気?」

春香

「あかん、いくら華音が強いといっても、万が一がある」

エレーナは怒った。

「ダメだって!華音ちゃんは15歳の高校生なんだって!」

「私は許さない」


柳生霧冬がシルビア、春香、エレーナに声をかけた。

「華音の職務はVIPの警護団の一人」

「その警護団は、俺と潮崎、柳生隆、井岡の柳生軍団」

「余程のことにならなければ、直接の戦闘はさせない」

「シルビアと春香、エレーナは、それでも万が一があった場合の、癒しと回復を頼みたい」


柳生霧冬の表情も言葉も重かった。

シルビア、春香、エレーナは、ただ頷く以外に、何も出来なかった。

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