第432話美少女アイドルを救え!(10)

結衣が出した結論は、「芸能界引退」だった。

理由としては、しっかりと勉強をして、自らを高めたいというもの。

結衣を応援してきた数多くのファンの嘆きや、芸能マスコミやワイドショー番組では「無実なのに唐突過ぎる」などのコメントが多く寄せられたけれど、結衣の意志は変わらなかった。


また、芸能界引退にかかる交渉や事務手続きは、全て柳生事務所が対応。

「本人の意志に逆らって、余計な引き留め工作をすれば、柳生事務所としても厳格な対応をする」との態度が、芸能プロダクションに大きな恐怖感を持たせた。

何しろ、柳生事務所は、各種のテロ事件の防止や、政界の闇事件、指定暴力団の抗争事件まで解決して来た弁護士事務所として名高い。

そのため、「叩けばホコリが出る」芸能事務所としては、恐ろしくて反発などは出来なかったのである。


さて、芸能界引退をした結衣は、その後の進路については、少し迷った。

考えたのは、三種類の進路。

一つ目は、柳生の地に帰ること。

二つ目は、シルビアと春香の通う女子高に転入すること。

三つ目は、華音の通う学園に転入すること。


「柳生に今、帰っても、あまり面白くないなあ」

「せっかく都内に華音もいるし、シルビアも春香もいるし」

「お世話になった柳生事務所の近くにいるほうが、安全かな」

「そうなると、シルビアと春香の女子高か、華音の学園」

「女子高は・・・アイドル辞めて入ると面倒かな」

「変なジェラシーがあると、それも嫌」

「そうなると、華音の学園、吉村のおばちゃんが学園長だよね」

そこまで考えて、結衣が出した進路は、「華音の学園に転入」だった。


吉村学園長も奈良出身、結衣とは子供の頃から懇意、すぐに受け入れの許可を出した。

「わかりました、結衣さんの全てを引き受けます」

「安心して、当初は違和感があるかもしれないけれど」

「今の学園は平和だから」

「華音君にもサポートさせる」

結衣にとっては、「華音がサポートする」が、一番の安心材料だった。

そして、芸能界引退の翌週月曜日から、華音と一緒に登校することになった。


尚、その前日の日曜日、華音は文学研究会の面々を、特別に華音の屋敷に招いた。

目的は。結衣の顔合わせ。


全員がリビングに入ると、華音は結衣を隣に座らせ、頭を下げる。

「大きな話題になった結衣さん、僕より一つ年上、幼なじみです」

「お願いします、力になってあげてください」


部長の長谷川直美は、目を細めた。

「ほんと、アイドルって可愛いね、もったいないとは思うけれど、華音君に頭を下げられては仕方ない、全力で守るよ、安心して」

佐藤美紀

「うん、重い決断と思う。でも、任せて、心配いらない」

花井芳香

「同じ2年生だよ、私も頼って」

志田真由美

「見ているだけで可愛くてドキドキするけど、わかりました」

雨宮瞳

「毎日一緒に登校しましょう、楽しみです」


結衣は、本当に感激。

「芸能界だと、結局足の引っ張り合いばかり」

「心がやすらぐし、元気が出る」

「ありがとう、みなさん、華音君」


そこまで話がまとまった時点で、リビングにシルビア、春香、エレーナが入って来た。

エレーナは、大きなお盆に、大量のドーナツ。

「こういう幸せな時は、甘い物がいいの、ルーマニア風ドーナツを作りました」


すると華音は結衣に余計な言葉。

「もうダイエットはいらない、たくさん食べて」

「小さな頃は、丸々とした結衣ちゃんだった」


・・・華音は、結局、結衣はもちろん、全ての女子から、ポカリをされている。

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