第431話美少女アイドルを救え!(9)

翌日、結衣にかけられた策略的な濡れ衣は、特に仕掛けた当人たちにとって、恐ろしいほどの報復結果が発生することになった。


まず、野党の大幹部の政治家と、結衣とセンターのポストを争ったアイドルの「ホテルでの密会」写真が、「匿名の一ファン」から、その政党本部、マスコミ各社、警視庁まで送付された。

写真を送付された直後は、「身に覚えのないこと、政権の陰謀、合成写真」と言い張っていた政治家は、そのアイドル以外の少女との密会写真も続々送付され、釈明も不可能、警察には「未成年淫行」の嫌疑までかけられ、聴取を受けることになった。


また、結衣とセンターを争ったアイドルも、「私は知りません」を、押し通せなかった。

かつては「手下」として、こき使っていた後輩アイドルの複数に、あっさり手の平を返され、マスコミに「本当の事」を白状されてしまった。

そのため、本人は涙ながらの謝罪と芸能界引退を発表するまでになっている。


そしてテレビ局のプロデューサーも厳しい立場。

自らのテレビ局では、社長自らが釈明と謝罪会見を行ったものの、他局のワイドショーは炎上が収束の気配がない。

「政治家のごり押しに負けて、アイドルグループにも騒動のタネ」

「政治家の意図を受けて、何の落ち度もないアイドルを貶めようとする策略に加担など、何事か」


さて、そんな炎上が続く中、「濡れ衣」が晴らされた結衣には、ファンから復帰願望が湧き起こっている。


「結衣!戻ってきて!」

「疑ってごめんなさい」

「結衣が出ないステージなんて見たくない」などの数限りない復帰願望がアイドル事務所に送られ、ネットにもあふれている。


そのような状況の圧倒的な改善により、結衣の両親は柳生事務所ビルから戻って来た。

そして、華音の屋敷で、結衣の今後を相談することになった。


柳生隆

「もう、大丈夫と思うけれど、結衣ちゃん、どうするの?」


結衣は全員に深く頭を下げた。

「本当にありがとうございます、何から何まで助けてくれて」

「ファンの気持も、本当にうれしい」

「戻れるものなら、戻りたいとも思う」


シルビアは、首を傾げる。

「戻れるんじゃないの?邪魔者がいないんだから」

春香は、結衣の顔をじっと見た。

「戻れない事情もあるの?」


華音は、少し結衣の思いがわかったようだ。

「つまり、アイドルだからってこと?」

「濡れ衣であっても、一度変な騒ぎになると、後を引くのかな」


結衣は頷いた。

「うん、そうなると、私がステージに出ると、マスコミの取材は、そればかりになる」

「一生懸命に練習した踊りとか歌の取材はしなくなる」

「そうすると、他の女の子に迷惑がかかる、それが可哀想だし、私も辛い」


エレーナは難しい顔。

「なんか面倒な社会だね、芸能界って」

「すごく軽薄で無慈悲って感じ」


華音は、結衣の手を握った。

「結衣ちゃんのしたいように、僕たちは、どんな結衣ちゃんでも応援するし」

「ずっと仲間だから」

その華音につられて、シルビア、春香、エレーナも結衣の手に、その手を重ねる。


ずっと堪えていた結衣の瞳から、涙がこぼれだしている。


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