第389話なごやかに笠女郎の勉強会が始まった。

華音の学園玄関前には、黒ベンツ、立花管理人が降りてきた。

「お屋敷には、双方の学園の生徒様と教師様たちがお揃いになっておられます」

「既に自己紹介も終わりました」


華音は驚くばかりになるけれど、そうなると急がなければならない。

そのまま黒ベンツに乗り、二人の学園長と一緒にお屋敷に帰ることになった。


吉村学園長が驚く華音を笑う。

「華音君がへこんだりするから、無理やりに、こうしたの」

河合学園長も続く。

「離しませんよ、こんな面白い学生を」

吉村学園長

「それにしても、笠女郎ねえ・・・よく思いついたね」

華音は恥ずかしそうな顔。

「うーん・・・ドキッとする言葉遣い、言葉の選び方でしょうか」

河合学園長

「恋の初めから失恋までの歌だよね、ところで華音君は彼女は?」

華音はますます真っ赤な顔。

「え・・・あ・・・はい・・・心に決めた人は・・・います」

吉村学園長はにっこり。

「うん、相思相愛だよ、邪魔する人も多いけれど、ぶれない」

「見ていて実に可愛い」

河合学園長

「そうなると、私の学園の女生徒にも、しっかり釘を刺さないとね」


・・・・そんな華音が赤面するばかりの状態で、黒ベンツはお屋敷に到着した。

車を降りると、立花管理人。

「作業場は、大広間となります」

「先ほども申しましたが、全員お揃いでお待ちになっておられます」


華音が吉村学園長と河合学園長を伴って大広間に入ると、大きな拍手。

華音は、挨拶を始める。

「三田華音と申します」

「本日は、私の屋敷にお越しいただき、誠にありがとうございます」

「それから、予想外の展開となりましたが、ここに私の学園の吉村学園長と、シルビアと春香の学園の河合学園長も、お見えになっております」

吉村学園長と河合学園長が頭を下げると、また拍手。


華音は話を続けた。

「万葉集の笠女郎の和歌、それをテーマにしたスピーチと資料に」

「高校生だけでなく、双方の学園の教師の方々もご参加していただけるそうで、これも大変感謝しております」


と、そこまでは、順調な挨拶だった。

しかし、シルビアが文句。

「華音!超硬い!長い!」

春香も文句。

「ねえ、どうして四角四面?面白くない!」


うろたえる華音の前に、四人の教師が立った。

華音の学園では、担任の萩原美香と、文学研究会顧問の田中蘭。

そして華音とは初顔合わせになる、シルビアと春香の学園の教師らしい。

華音が頭を下げると、自己紹介。

「私は、伊集院洋子と申します。シルビアと春香の学園で古文を受け持っていおります」

「私も同じ学園で、日本史を受け持っております大塚由美と申します」


吉村学園長が全員に挨拶。

「確かに華音君らしいカチコチの挨拶でした」

「さて、それはともかく、笠女郎の恋の歌という面白いテーマの、二つの学園の勉強会になります」

「そして、それに参加したいと申し出た教師の皆様」

「あくまでも、学生の補助としてになります」

「解釈に困った時の辞書としてお使いください」


河合学園長も続いた。

「これは受験のための授業でも何でもありません」

「全員で、どう解釈したら、笠女郎が喜んでくれるのか」

「それに向かって、取り組みましょう」


華音の屋敷の大広間は、再び拍手と歓声に包まれている。

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