第388話意外な訪問者と意外な展開

リビングに入り、華音は全員に謝った。

「ごめんなさい、短慮を起こしました」

その華音の肩を柳生隆がポンと叩く。

「引きずるな、前に進もう」

その後は誰も華音も松田明美も責めることはなく、立花管理人が淹れた紅茶とクッキーで和気あいあいの一夜となった。

また、お風呂も雑魚寝も、今までと変わらなかったけれど、松田明美は特に華音にピッタリ張り付き状態。


それを見た今西圭子

「今日だけは許す」

シルビア

「でもべたつき過ぎ」

春香

「仲直りすると、いつもそう、子供の頃から同じ」


そんなヤッカミやらがあったけれど、まずは平穏に戻ったのである。



さて、翌日になった。

華音がいつも通りに登校し授業を受け、放課後になると、学園長室に呼び出された。

そして華音が学園長室に入ると、吉村学園長と見慣れない紳士が華音を迎えた。


吉村学園長がその紳士を紹介する。

「この人は、シルビアと春香が通う女子高の学園長様で、河合様」

華音は、深く頭を下げた。

「三田華音と申します、いつもシルビアと春香が大変お世話になっております」


その河合が華音と握手を交わす。

「はい、河合と申します、今回はお願いがあって、参りました」


全員がソファに座り、話が始まった。

河合

「今回、私たちの学園の文化祭に出演していただけるとのこと、実にうれしく、ありがたいと思っています」

華音は、頭を下げ、神妙な態度。

「はい、急にそんな話になってしまいまして、まだ当学園の吉村学園長にも、しっかり相談もしていなくて申し訳ないなあと思っておりまして」

吉村学園長

「まあ、華音君から申し出た話ではなくて、シルビアと春香が無理やり誘ったのが発端のようです」

「それに私たちの文学研究会も興味を持って」

「私は、河合様の学園のほうでトラブルにならなければ、全くかまいません」

河合はホッとした顔。

「助かります、とにかく面白い試みで、私も興味がありますし」

「何より、私の学園の古代史研究会のメンバーが、すごく張り切っていて」

「この時代に万葉集の恋の歌とは、実にロマンあふれるテーマと思います」

「なかなか、こんな企画をできる高校生もいないので」


華音は河合学園長に尋ねた。

「あの・・・ところで・・・お願いとは・・・」

河合は頷いた。

「実はね、私も華音君の御屋敷での事前作業を見たいなあと」

華音は笑顔。

「はい、全くかまいません」

吉村学園長

「それでね、華音君、学生たちの援護を教師もしたいの」

「私も手伝いたいし、古文や歴史の教師もね」

河合

「それは私の学園の教師も、そう言っておりました」

「授業とかの仕事ではなくて、純粋に万葉集を楽しみたいと」


華音は驚いた。

「すごく大がかりになりましたね」

「でも、笠女郎は喜ぶかな」


いきなり吉村学園長が立ち上がった。

「さあ、早速行きましょう!」

「早く行かないと、シルビアと春香に叱られますよ、華音君」


河合学園長は、クスクスと笑っている。

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