第387話華音引き留め計画 松田明美と華音の子供時代からの「習わし」。

お屋敷の一階リビングでは、シルビア、春香、松田明美が懸命に「華音引き留め対策」に取り組んでいる。


シルビア

「私たちの学園長も華音のスピーチに期待が大きいから、警備は対処するって言っている」

春香

「学園の大講堂をゲットした、これで相当の人数は聴けることになる」

松田明美

「上司に言ったら、怒られた、華音君を護るのは当たり前で、ここで奈良に帰すと警察の恥とか」


二階の華音の部屋からおりてきた柳生清。

「柳生事務所も手練れを集めるし、情報も集める」

「簡単には手出しをさせない、柳生の名にかけて」


今西圭子が笑う。

「笠女郎にこれ以上落胆させたくない」

「文部科学省の藤村君と協力して、高校生和歌シンポジウムにしようかと」

「そのシンポジウムで妨害活動をすれば、そこの高校には当然厳しい処分」


柳生隆が、腕を組んだ。

「あとは華音しだい」

「まあ、大丈夫と思うよ」


柳生清

「華音君だって弾けることもあるさ」


立花管理人が、リビングから廊下に出た。

「華音様が降りて来られるようです」

「しっかりとした足取り」


松田明美は、待っていられなかった。

「華音ちゃん!」

涙をボロボロ流しながら立ち上がった。


今西圭子が松田明美の背中を押した。

「今回だけは許してあげる、ほら!さっさと!」


「うん!」

松田明美は、廊下に出た。

そして降りて来た華音をメチャクチャに抱きしめる。


「ごめーん!華音ちゃん!」

「私が・・・私が・・・悪かった!」

「ひどいことを・・・ごめん・・・」

「大好きな華音ちゃんに・・・」


華音も泣いている。

「僕も、短慮でした」

「ごめんなさい、明美さん」

「僕も、明美さん、大好きです」

と、しっかり抱きしめる。


その顔を見合わせるエレーナと瞳に、今西圭子の「解説」。

「まあ、気にしないで、単なる仲直りの子供の頃からの習わし」

「明美が華音ちゃんに文句を言って、華音ちゃんがブンむくれて、プイと横を向いて」

「結局、仲直りすると、いつもこうなるだけ」


シルビアも今西圭子を補足する。

「だから子供の抱っこと思っていい」

春香は、「でもさ」と、松田明美を華音から引きはがす。

「下手をすると明美さん、唇まで奪うから」


ようやく松田明美から引きはがされた華音はゼイゼイしている。

「明美さん、最近、大きくなった?」


明美はタプタプと揺らす。

「うん、Gぐらい」


松田明美は結局、周囲の女子たちから、しっかり睨まれている。

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