第371話沢田文美と小川恵美の華音ゲット作戦は?

華音がいつも通りに雨宮瞳と登校、最寄の駅に着くと、これまたいつもの通り、小川恵美が改札口に待ち構えていて、大騒ぎ。

「華音くーん!おはよう!」

何しろ、改札口のまわり全部に聞こえるような大声なので、華音と瞳は、顔が真っ赤。

華音

「何もあそこまで大きな声で・・・」

「あれが、沢田先輩、元気が取り柄、悩みなし・・・」


しかし、沢田文美は、そんな二人の想いなどは、無関心。

華音が改札口を出るなり、瞳をグイッと押しのけて、華音の腕を無理やりゲット。

そしてまた大騒ぎ。

「わーーー!これがしたかったの!」

「ね、恋人同士みたい!」

「わーーー!幸せ!デートしようよ!」

「どう?華音君!」


華音は焦るし、瞳は超ムクレ顔になるけれど、そんなことは全くお構いなし。

「美味しいもの食べたいなあ!」

「できれば二人きりで」

「そうだなあ、焼き肉モリモリってどう?」

と、食べる物まで指定してくる。


華音は、押されまくりで「はぁ・・・美味しそうですね」と、穏便に応えるのみ。


すると、沢田文美は、また超元気。

「よし!わかった!焼肉食べ放題にしよう!」

「美味しいお店探しておく!」

「そのあと、二人カラオケね!」

と、大声で盛り上がるけれど、さすがに通学の生徒が多い道中、「待った」がかかった。


まずは、同じテニス部の二年、小川恵美が後方からダッシュして来た。

そして沢田文美に、思いっきりの文句。

「ちょっと!文美!私の華音君に何をしているの!」

「勝手に腕を組んで、焼き肉食べ放題の二人カラオケ?」

「そんなの却下!」


しかし、沢田文美は、そんなことでは引き下がらない。

「こういうのは、先着順なの」

「恵美みたいなノロマには華音君はもったいない!」

「ねえ、華音君、焼き肉食べたいよね!」


華音は、実に答えづらい。

「えっと・・・あの・・・うん・・・」

と、実に優柔不断。


すると小川恵美が、沢田文美のちょっとしたスキを見つけて押しやって、華音の腕をゲット。

「ねえ、華音君、お寿司食べたくない?」

「やはりね、日本人はお寿司なの」

「私の知り合いが銀座でお寿司屋さんしているの!どう?」


華音は、「へえ・・・面白そう」と、実に危険な対応。

近くで聞くばかりの、瞳は、実にハラハラとなる。


それでも、大騒ぎをする一行の前に、校門が見えている。


華音は、小川恵美の腕をするっとほどき、瞳を見た。

「とりあえず、学園のレストランで、街中華風のメニューを取り入れて欲しいとの考えがありまして」

瞳は、涙が出るくらいにうれしかった。

「そうなんです、そういうのもどうかなと」


すると、一緒に歩く学生たちが反応し始めた。

「へえ・・・面白いかも」

「時々、お昼にラーメン食べたくなるし」

「いや、野菜炒めとか、麻婆豆腐とか?」

「焼き肉丼も捨てがたい」


この時点で、沢田文美と小川恵美の華音ゲット作戦は、「一時中断」となってしまった。

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