第364話重荷に肩を落とす華音

吉村学園長、柳生清、潮崎師匠、文科省の藤村と学園長室で別れ、華音は帰途につく。

そして、本当に珍しいけれど、下を向いてトボトボの状態になった。

すると、グラウンドにいた運動部や帰宅途中の生徒も華音の周りに集まって来た。


いろんな声がかかる。

「華音!何かあったの?」

「空手は決着したよね、完全勝利で」

「元気出してよ、こっちまで不安」


・・・・・

あまりにも、あちこちから声がかかるので、華音は「かくかくしかじか」と、文科省の藤村から言われたことを告げる。


途端に動揺の声があがる。


「げ・・・マジ・・・大変」

「あらーー・・・フランス語とドイツ語とイタリア語?」

「普通の勉強に重なるんだよね、寝る暇がある?」

「それは親善大使かもしれないけれど、他の国の親善大使が、そこまで勉強するのかなあ」

「はぁ・・・可哀想・・・」


華音は、「まあ、仕方ない、やるしかないですね」と、あまりの動揺に申し訳なさそうな顔。


その華音にまた、いろんな声がかかって、華音はなかなか歩くことも出来ない。



さて、吉村学園長たちは学園長室のモニターから、その様子を眺めている。

吉村学園長

「いつも、ああやって人が集まるの」

潮崎師匠

「あはは、人の気を引くよな、華音は」

文科省藤村

「華音君が来る前と全然違いますね、以前はクールで他人のことには我関せずの生徒が多かった」

柳生清

「男も女も関係なく、群がっているなあ」

吉村学園長

「彼女になりたい女子も多いし、弟のしたい男子も多い」

「でも、不思議にあまり揉めない」

潮崎師匠

「最初に公認カップルを作ったほうがいいかなあ」

藤村

「でもねえ、あの華音君としっかり寄り添える人も、難しいかなあ」

柳生清は笑う。

「いや・・・それが・・・」

学園長室は、いつの間にか「華音の彼女談議」になっている。



その華音が、お屋敷に戻ると立花管理人が笑顔で迎えた。

「華音様、早速ですが、応接に、お客様がお待ちになっております」

「文科省からの御依頼で、お見えになっております」

「一人は東京外語大から、若い女性のお方」


華音は、また肩を落とした。

「立花さん、このまま出かけたくなりました」


立花管理人は首を横に振る。

「いえ、いけません、それともう一人、それはお知り合いの方」


華音がキョトンとした顔になると、立花管理人。

「同じく、親善大使の藤原美里様」

「藤原美里様も、文科省の関係とか」


華音は、深いため息。

「わかりました、応接に向かいます」


その時点で、華音の肩が、また落ちている。

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