第365話森田真由美と藤原美里は、ご機嫌。
「お待たせいたしました」と華音が、応接間に入ると、立花管理人の言う通り、二人の女性がソファに座っている。
その一人は横浜で食事をした藤原美里なのですぐにわかる。
もう一人は、小柄でしっとりとした感じ、可愛らしい顔をした、いかにも女子大生と見える。
華音は「三田華音と申します、わざわざの御来訪、感謝いたします」と頭を下げる。
すると、二人の女性がソファが立ち上がった。
最初に挨拶をしたのは、藤原美里。
「藤原美里です」
「華音君、横浜の時には、目を治療してもらって、猫背も直してもらって、しっかりとお礼も出来ず」
「その上、突然、お邪魔してしまって」
と頭を深く下げるので、華音は恐縮。
「いえ、少し心配になったので、こちらから申し出て、施術をさせていただいたこと、お礼には及びません」
「それよりは、その後の経過はいかがですか?」
藤原美里は、花のような笑顔、その大きな瞳をパッチリと開く。
「はい!華音君、本当にくっきりと、世界はこんなに美しいのかなと」
実は、そのまま華音の手を握りたいような動きを見せるけれど、華音は笑顔で頷いただけ、目を東京外語大の女子大生に向ける。
その女子大生も、自己紹介。
「はじめまして、華音君、文科省の依頼で参りました」
「東京外語大の大学生、森田真由美と申します」
やはり外見通り、しっとりとした声、ただ表情は可愛らしい顔から、少し緊張気味になっている。
華音の目の合図で、全員がソファに着席、話が始まった。
尚、藤原美里は、話の性質上、華音の隣に座った。
華音は素直に森田真由美に頭を下げた。
「今日、学園に文科省の藤村さんがお見えになられまして、そこでお話を伺いました」
「初めての英語以外の本格的なたくさんの外国語の勉強、現実問題として、戸惑っています」
華音の言葉に、藤原美里も同感のようで、深く頷いている。
東京外語大の森田真由美は、その表情を和らげる。
「大丈夫です、お任せください」
「とりあえずのフランス語、イタリア語、ドイツ語、カリキュラムをしっかり立てて、来年のオリンピックまでには、ある程度の読み書きと会話程度に」
華音は、森田真由美に質問。
「あの、レッスン場所とかレッスン方法は?」
藤原美里も、聞いていなかったようで、森田真由美を見る。
森田真由美は柔らかい顔。
「華音君と藤原美里さんが問題なければ、ここのお屋敷を使わせて欲しいのですが」
藤原美里は、即答。
「私は全く問題ありません」
華音は少し考える。
「森田さんのお住まいは?失礼ですが、遠くなると大変では?」
森田真由美は、明るい顔になった。
「いえ、実にお近く、西荻です」
「自転車で来ます、10分かからない」
「レッスン法は、習熟に合わせて変化、私が考えます」
華音と藤原美里が、「はぁ・・・」と頷くと、応接間の扉が開いた。
立花管理人が、ワゴンに紅茶とクッキーを乗せて入って来た。
「ベルガモットの紅茶と、わが屋敷のクッキーでございます」
森田真由美と藤原美里の顔が、実にうれしそうに変わった。
森田真由美
「こんな素晴らしいお屋敷で接待まで受けて、華音君と美里さんにレッスンなんて、最高」
藤原美里
「何と言っても、超名門の貿易会社のお屋敷の紅茶とクッキー、その上、可愛い華音君と一緒ですもの」
華音は、「はぁ・・・面倒・・・」と、心の中で思っている。
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