第361話意外な結末

吉村学園長が、うなだれるばかりの都内選抜監督前田と、都内選抜空手選手に厳しく迫った。


「貴方たち、華音君とこの私、そして学園の方針にまで喧嘩を売って」

「花いじりを馬鹿にして」

「華音君に田舎に帰れ?ふざけるのも、いい加減にしなさい」

「その華音君に、コロコロと負かされて!」

「ねえ、何か言うことはないの?」


柳生清が、怒る吉村学園長を押し留めた。

「ここに文科省の藤村君もいるし」

「全てを知っている」

「それなりの対応をしてもらえば、いいだろう」


文科省の藤村が立ち上がった。

その顔も厳しい。

「せめて、自分たちから謝罪の一言もあれば、考慮はします」

「ただ、処分の対象とはします」

「少なくとも、空手部ではない華音君に暴言を吐き、試合をした段階で問題です」

「試合の結果以前の話、厳しく対処します」


そこまで言われて、都内選抜監督の前田が、ようやく立ち上がった。

その前田の姿を見て、都内選抜の空手選手も、モタモタと立ち上がる。

前田が華音に頭を下げた。

「実に申し訳ない」

「心から謝る」

都内選抜の空手選手も、お互いの顔を見合わせながら、頭を下げる。


華音は、嫌そうな顔。

「そんなことをしないでください」

「他人に言われて謝るとか」

「他人と顔を見合わせて謝るとか」

「そんなの謝罪でも何でもない」

「そういう形式的な、心のこもっていない謝罪なら、受けません」

「全く無意味と思うのです」

「本当に謝罪の意思があるとは思えませんので、顔をあげてください」


華音は、そのまま一礼をして、空手部練習場を出て行ってしまった。


潮崎師匠は、また呆れ顔。

「・・・ったくなあ・・・」

「お前ら、ガキか?」

「謝罪の仕方も知らんだろ、その前に華音の言う通りさ」

「悪いことをして、悪いと思っていないから、そうなる」

「空手は真似事、人間も幼い」


吉村学園長が結論を言い渡した。

「都内選抜の監督、そして選手の皆様」

「お引き取り願います」

「それから、今後のことは、文科省と相談の上、対処しますので、ご承知願います」


都内選抜の監督と選手は、一言も返せなかった。

うなだれて、空手練習場を去るしかなかった。


空手部顧問の松井が不安な顔。

「これで、腹いせに、何か仕掛けて来ることは?」

柳生清が厳しい顔。

「即、警察に通報、松田明美にも連絡済み」

吉村学園長は難しい顔。

「いつかは、こうなると思ったけれど」

潮崎師匠

「しゃあない、起きたことは」

「ただ華音は強すぎるから、まともな攻撃はしてこないとだけは言える」


文科省の藤村は、そんな深刻な話の中、グラウンドから聞こえて来る歓声に気がついた。

そして、空手部練習場から、グラウンドを見ると、花壇に人だかりが出来ている。


「おや・・・華音君がスコップを振っているのはいいけれど」

「あれ?都内選抜の監督と選手も?」

「そのうえ、笑い声まで?」


そうなると、空手部練習場にいた面々も、気になって仕方がない。

結局、全員が花壇に戻ることになった。

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