第360話華音VS潮崎師匠

華音が潮崎師匠に声をかけた。

「師匠、遊びます?」

潮崎師匠は、「ああ、そうだな」と、そのまま華音の前に進む。


華音は、吉村学園長と空手部顧問松井に頭を下げた。

「すみません、少し練習場を使わせてください」

吉村学園長は頷き、苦笑。

「そうか、さっきのは売られた喧嘩で、これからは華音君が潮崎師匠と遊びたいから、頭を下げるのか、実に律儀な華音君だ」

空手部顧問松井は、あ然。

「マジで、礼儀正しい、堅物?」


その華音と潮崎師匠の「遊び」は、いきなり始まった。

攻めるのは、潮崎師匠。

とにかく速くシャープな突きや蹴りが華音を襲う。

そして華音は、こどごとく余裕で見切り、笑いながらかわしていく。


都内選抜監督前田がうなった。

「うわ・・・あの潮崎さんって・・・強い」

「俺ならよけられない速さ、腕でブロックしても、一発でヒビが入る」

「華音は、あの攻撃をどうしてかわせる?」

学園空手部顧問松井は震えた。

「俺らの時は合気で吹っ飛ばされたけれど」

「あんなことも出来るのか」

吉村学園長がポツリ。

「華音君ね、人間相手なら余裕かなあ」

「奈良の山奥で熊と戦った時もあるみたい、中学生の時にね」

「無事に帰って来たよ、ほとんど無傷だった」

「その後、柳生霧冬さんが、山で両脚骨折の熊を見かけたとか」


凄まじい速度で華音を攻撃し続けて来た潮崎師匠が、いきなりジャンプ。

華音の頭部に回転回し蹴りを打つ。

華音は、また笑う。

「師匠!そういう派手な技はわかりますって」

「ただ、飛びたいだけでしょ?」

と、そのま脳天に降って来た潮崎師匠の右足首を掴む。

すると、潮崎師匠は華音に右足首を掴まれたまま、左足で再び華音の側頭部を狙う。

華音は、また笑う。

「しょうがないなあ、まったく」と、左足首も掴んでしまう。

結局、潮崎師匠は華音の両足首を掴まれ、上から吊るされている状態。


今度は吊るされたままの潮崎師匠の右拳が、華音のみぞおちを狙う。


都内選抜監督前田はうめいた。

「うわ・・・人間技ではない」

しかし、潮崎師匠の右拳は、華音のみぞおちには当たらなかった。


華音は苦笑い。

「苦し紛れに余計なことをするから・・・」

と掴んでいた両足首を離してしまう。

潮崎師匠は、そのまま道場の畳にドスンと落ちる。


そして潮崎師匠が起き上がろうとすると、華音が後ろに回り、首は裸締めで締める。

潮崎師匠は、華音の腕をポンポンと叩き、降参の意を示す。

華音は、クスッと笑う。

「はい、終わり」


裸締めを解かれた潮崎師匠は、「やれやれ」といった顔。

「結局、一発も当たらない」

「華音だけだ、当たらないのは」

「しかも、手加減してるだろ?」

「いつでもカウンター出来ただろ?」


華音は、にっこり。

「そんなことしたら、師匠、入院です」

「シルビアにも春香にも怒られ、立花管理人はガッカリです」


「そうか、あのお姉ちゃんたちか、華音は苦手だよな」

「立花管理人か・・・今日は酒飲んで徹夜だ」

「また華音にやられたって、泣くことにする」

潮崎師匠は、大笑いになっている。

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