第349話学園文化祭(6)休憩時間に新聞部より取材と写真撮影の依頼。

午前中のスピーチを終えた華音は、控室に戻った。

その華音の周りに、文学研究会のメンバーや生徒たち、教師も集まっている。


顧問の田中蘭が華音をねぎらう。

「お疲れ様、華音君、素晴らしかった」

華音は、恥ずかしそうな顔。

「なかなか、短い時間で言い尽くせなくて、端折ってしまいました」

担任の萩原美香は、華音の肩を揉む。

「いやいや、すごくわかりやすくて、よくまとめたね」

華音は、頭を下げる。

「はい、難しかったけれど、取りまとめだけは、なるべく落ちがないようにと」

意外な男子生徒も声をかける。

空手部の剛。

「格闘もすごくて手が届かないけれど、この源氏はすご過ぎるよ」

「全く聞き漏らせなかった、マジで源氏を読みたくなった」

剣道部の塚本。

「同じだよ、もっと聞きたくなってね」

華音は、少し笑う。

「いえ、午後も同じ内容で・・・」

テニス部の沢田文美。

「もー・・・紫の上が可哀想で泣いちゃったよ、マジで深いよね」

・・・・・


そんな話が続いて、華音は昼食も取れない状態が続く。

その華音に、今西圭子と松田明美が、「差し入れ」と称して、柿の葉寿司を大量に持ってきた。


華音は二人に尋ねた。

「お屋敷で作ったの?」

今西圭子は頷く。

「おそらくね、文学喫茶は大盛況で在庫切れになるかと、100個は作った」

松田明美

「華音ちゃんが食べたいかなあと思ってね、どうせ囲まれるだろうし」

華音はにっこり。

「まさか、ここまでとは思ったけれど、ありがとう」

「周りの人にも、配れる限り配って欲しい」


その柿の葉寿司は、大好評だった。

「うん、こういうのも元気になる」

「今度駅弁を買う時は、これにする」

「鮭も鯖もあるんだ」

「へえ・・・これは鯛」

「華音君のスピーチの後で、これは身体も心もなごむ」


さて、華音が柿の葉寿司を三個食べた時だった。

控室のドアがノックされた。

部長の長谷川直美がドアを開けると、新聞部の取材のようだ。

そして、新聞部の後ろには、またたくさんの学生がいる。


「私、新聞部の2年、高橋麻友と申します」

「あの・・・華音君の取材をお願いしたいということと」

「記念写真を撮りたいんです」

「華音君を真ん中に入れた写真と・・・」

「それと・・・できれば、ペアの写真を希望する人が多いんです」


長谷川直美は、華音を振り返る。

とにかく今までの文化祭で、文学研究会は地味な存在、新聞部の取材は受けたことが無い。

「どうする?華音君」


華音は、「どうしよう・・・」と、少し悩む感じ。


すると、高橋麻友は、少し頭を下げて控室に入って来た。

「もうね、すごく大好評で、午後のスピーチにも入りきれなさそうで」

「これは取材をしないといけないと思って、ここまで来たら、こんなに生徒が詰めかけていて」

「写真撮りたいとか、いろいろで」

「高橋さん、新聞部でしょ?写真撮ってとか、超大変で・・・」


華音は、そこまで聞いて、結論を出した。

「わかりました、取材には応じます、ただ、午後のスピーチの後にしてもらうと助かります」

「それから、写真は、文学研究会のメンバー全員を入れて欲しいのですが」

「僕だけの部活ではないので」


やはり、華音らしい、穏当な返事になっている。

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