第326話シルビアと春香の不安

文学研究会での会議は一応終わり、華音は帰宅した。

華音は、奈良では様々面倒なことを予想しているけれど、それでも次の3連休までは、ほぼ3週間ある。

多少は時間的な余裕があるので、あまり焦ってはいない。

華音がそんなことを思っていると、立花管理人が華音に数点、報告や確認したい事があると言う。


立花管理人

「まず、奈良での宿泊には、ご実家の準備なので、全く問題がありません」

華音

「はい、母はそういう準備は完璧主義です」

立花管理人

「寺社としては東大寺、興福寺、春日大社、氷室神社などの奈良公園界隈」

「奈良町では、元興寺、御霊神社でしょうか」

「それとご実家の西ノ京界隈では薬師寺、唐招提寺」

華音

「日数も限られていて、人数も多いかな、場所を絞りたい」

「明日香村まで行けるかなあ、斑鳩の法隆寺までは無理かもしれない」

立花管理人は、頷いて話題を変えた。

「藤原美里様と、御両親が、横浜での施術の御礼に来られたいとのご希望がございます」

華音は、少しためらう。

「うーん・・・御礼なんていらないのにね」

「たまたま、そう思って施術しただけだもの」

立花管理人は苦笑。

「それは難しいでしょう、お断りすると人間関係にも響きます」

華音

「わかりました、日程などのご希望はありますか?」

立花管理人

「華音様しだいでと、申されておりましたが」

華音

「たいてい、夜にはおりますのでと、伝えてください」

立花管理人は頷き、次の連絡事項を言う。

「横浜の周様と陳様が、ここの料亭でお食事をされたいようです」

華音は、それには、うれしそう。

「はい、出来る限り顔を出します」

華音と立花管理人の相談は、一旦、終わった。


華音が真面目に明日の予習などをしていると、シルビアと春香が部屋に入って来た。

そして、両方とも不安な顔。

シルビア

「華音、女のトラブルは怖いよ」

春香

「余計な八方美人はやめるんや」

シルビア

「何があっても、瞳ちゃんもエレーナちゃんも泣かせてはいけない」

春香

「華音は、女に甘いところがある、それが疑念を招く」


華音は、面倒そうな顔。

「普通に接しているだけ、一期一会と思う」


シルビア

「それは、華音はそう思うだろうし、正解なんだけど」

春香

「華音のやさしさを、自分だけに欲しいと思う人もいるの」

シルビア

「瞳ちゃんの気持もわかるし、エレーナの気持もわかる」

春香

「人を好きになる、欲しいけれど、手に入らない辛さかな」


三人が華音の部屋で難しい話をしていると、エレーナが入って来た。

「ルーマニア風ドーナツを作った」

「食堂で食べようよ」


シルビアと春香は、いきなり華音の両腕を取る。

シルビア

「きっとすごいよ、そのドーナツ」

春香

「うん、チラっと見たけれど、マジ美味しそうやった」


華音は、話題が変わって、ホッとしている。

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