第325話佐々木あきからのメールに難儀する。

華音にとって、佐々木あきは、華音の前学期、転校前の奈良の学園の文学研究会で一緒に活動した先輩。

また長谷川直美にとっては、同じ奈良育ちなので、長年の知り合いになる。


華音のスマホに見えるメッセージは、下記の通り。

「華音君、LOVEの大連続」

「デートしようねとキスマークの大連続」


華音は、面倒そうな顔。

「行きたくなくなった」

長谷川直美は頷く。

「そうだね、佐々木あきって、面白いけれど案外しつこい」

そして華音に聞く。

「ねえ、一緒にやっていた時は、どうだったの?」


華音は困ったような顔。

「とにかくあれやこれやと、声をかけられました」

「そのデートの誘いも確かにありました」

「僕は、格闘の修行もあったので断ると、途端に真っ暗な顔」

「こっちの学園に転校する一か月前は、毎日でした」

「悪いなあとは思っていたけれど、断ることが多くて」

「僕は先輩に連れられて喫茶店に入るだけで、好きとか嫌いの感情が無くて」


そんな華音と長谷川直美のコソコソとした話を、文学研究会の部室にいる面々はすぐに気がついた。


顧問の田中蘭。

「ねえ、何かあったの?」

華音が言いづらいので、長谷川直美が女性たちを集めて、「かくかくしかじか」と小声で説明をすると、全員が問題を納得する。


萩原担任

「うーん・・・聞く限り面倒だねえ」

花井芳香

「華音君、はっきりその気がないって言わないとだめだよ」

佐藤美紀

「でもさ、トラブルも起こしたくないよね、交流授業の前だもの」

志田真由美

「長谷川部長がお知り合いなら、長谷川部長からバシッと言ってもらうほうがいいかも」


華音は、少し困っていたけれど、結論は早かった。

心配そうに華音を見る女性たちに、頭を下げた。

「定番の返事にします」と言い、書いたメッセージは、まさに定番から始まった。


「お久しぶりです」

「お逢いできる日を楽しみにしております」

「楽しく有益な合同授業となることを期待しております」

「合同授業のテーマなど、よろしくご教導願います」


萩原担任と田中蘭が「プッ」と笑う。

文学研究会の女生徒全員は「マジ?超定番・・・色気も何もない」とポカン。


その佐々木あきからの、返信も早かった。


「あはは!やっぱり堅い華音ちゃんらしいなあ!」

「お堅いことゆうて、東京のお姉さまたちを呆れさせんようにな」

「お土産は、甘いものがいいなあ」

「ちゃんとお姉さまたちに教わって、持って来るんやで」

「駅で買おうなんて、無粋な真似は許さんよ」


華音のスマホは、すでにお姉さまたちの前にある状態。


「つまり、好かれていたってことだよね」

「でもさ、今は私たちの華音君だよ」

「変な手は出させない」

「美味しいものねえ、華音君と街に買いに行く?」

「うん、当然、駅で売っていないもの」


華音は一難去ってまた一難、面倒そうな顔が復活している。


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