第318話華音の治癒御技と、華音らしいお願い

「大丈夫ですか?」

華音は太極拳のリーダー格の男に声をかけた。

その華音の後ろには、シルビアと春香、エレーナ、瞳が立つ。


「ああ・・・いやいや・・・やられました・・・陳と申します」

太極拳のリーダー格の男は、陳と名乗った。


華音も自己紹介。

「三田華音と申します」

「ボクシングの若者たちに声をかけた人と、警察の女性は僕の仲間ですので、ご安心を」

「それから僕の後ろに立つのは、シルビアと春香、二人とも従姉です」

「そしてエレーナは僕のお祖父さんの知人、瞳さんはクラスメイト、ご安心ください」


陳は、ほっとした顔。

「あそこで声をかけていただけなかったら、もっと酷い目に」

華音に頭を下げる。


華音は、その陳の怪我の様子を観察。

「額から血が出ています」

華音はその手のひらを陳の額にかざす。


「あれ・・・」

陳は二つの意味で驚いた。

華音の手のひらが、本当にスムーズに自分の額にかざされたこと。

そして、かざされた手のひらから、温かい力のようなものを感じること。


その華音と陳の様子を見ていた太極拳を練習していた人々が驚いた。

「あれ・・・出血が止まって・・・傷が治っていく」


華音が陳の額に手をかざして、約2分後、出血と傷口は完全に修復となった。


陳は、本当に不思議そうな顔で、華音に頭を下げる。

「ありがたいことですが、一体・・・これは?」


華音は微笑み、

「はい、痛そうでしたので、何か出来ないかなあと」

と言うだけ。

また、シルビアと春香も、ただ微笑むだけ。


陳は、深く頭を下げた。

「華音様、それからシルビア様、春香様」

「それから、御一行様には、本当に窮地を救っていただきまして」

そして目を潤ませて、その顔を上げた。

「お礼をしたいと思うのです」

「いや、せねばなりません」

陳の言葉に、太極拳を練習していた人全員が頷く。



そんなやり取りの中、ボクシングの若者たちは、全員が警察に連行されて行くようだ。

松田明美のキビキビとした言葉や指図の様子を見ながら、華音は尋ねた。

「こういうことは、以前にもあったのですか?」


陳は苦々しい顔。

「はい、それなので、本当に早朝に練習をするなどして、避けてきたのですが」

「何しろ、しつこくて・・・今日は私も感情を抑えきれず」


井岡スタッフも、ボクシングの若者たちの連行が終わったのか、華音達の所に来た。

そして、そのまま陳の前まで歩き、何かを耳打ち。

すると、陳の顔が緊張する。

「え・・・周様のご関係で・・・」

「テナントビルの・・・ご関係でもあられる?」


ただ、華音は陳の表情には、興味がないらしい。

少し笑って、「もし、お礼と言うなら、太極拳の型を教えていただきたい」と一言。


これには陳も大笑いになっている。

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