第304話華音とシルビア、春香の薬師三尊は藤原美里の近眼を治療する。

華音は、ニコッと笑った。

「治るかもしれません、少しだけ時間をいただければ」


藤原美里は意外なことを言われたので首を傾げると、官房長官が華音をフォローする。

「大丈夫、華音君には不思議な御力があります」

「信頼してかまいません」


藤原美里は、そう言われてもよくわからない。

「病院に入院とか、手術とか?」


すると華音は、また笑う。

「いえ、僕の指と呪文だけです」

華音の言葉と同時に、官房長官がウェイターを呼び、別室を用意して欲しい旨を伝える。



その華音の言葉と藤原美里の疑問、官房長官の対応をお姉さまたちが読む。

今西圭子

「ほう・・・薬師様の秘術を使うのかな」

松田明美

「まあ、瀕死の人を生き返らせるんだから、大丈夫かな」

シルビアは、華音のそばに行きたくてしかたがない。

「うん、見たいなあ、でも今からだとオジャマ虫かな」

春香はムッとしている。

「ああいうことを突然するから、気に入らない、手伝いたいなあ」

雨宮瞳は、かつてテニス部の沢田文美と顧問の治療をした華音を思い出す。

「とにかく官房長官の言う通り、ほんと、あれは不思議だった」

エレーナも、華音の治療技を見たくて仕方がない。

「何とかして別室に入る手段はないものか、偶然を装ってとか」


そんな状態で、全ての食事メニューが終了した。

華音と、藤原美里、官房長官は、そのまま席を立って別室に向かう。


すると、お姉さまたちと、雨宮瞳の思いが通じたのか、ウェイターがメッセージを携え、やってきた。

「華音様が、別室でご一緒にとのことです」

「華音様が施術の後に、紹介なされるようです」


今西圭子が、オジャマ虫女子全員の顔を見る。

「まあ、ご招待をされれば、仕方ないわね」

松田明美は今西圭子のお尻を叩く。

「ほら!くだらないことを言っていない!さっさと歩け!この大きなお尻!」


シルビアは、呆れた。

「二人とも豊胸で豊尻じゃない!どうして素直に一緒に行こうって言えないのかな」

春香は、フフンと笑う。

「まあ、曲り角女たちの、足の引っ張り合いさ、どうでもいい」


雨宮瞳とエレーナは、下手なことを言わないように、スルーを決め込んでいる。


そんな状態で、お姉さまたちと、雨宮瞳が「偶然を装い」別室に入ると、華音が黒丸大眼鏡を外して藤原美里に「施術」を行う体勢。

シルビアと春香は、それを見て、我慢が出来なかった。

「施術の後に紹介する」と言って来た華音のメッセージは、却下した。

そのまま、二人で華音の両サイドに立つ。


華音は、少し笑って藤原美里に二人を紹介する。

「助手が来たようです、シルビアさんと春香さん、二人とも、僕の従姉」


藤原美里が、驚いたような顔になるけれど、実は超近眼なので眼鏡を外すと、よく見えないらしく、また首を傾げる。


華音は、そのまま「施術」を優先。

藤原美里の両目を、その両手を当てて、薬師如来の真言を唱え始める。


「オン コロコロ センダリマトウギソワカ」

「病魔を除きたまえ払いたまえ、福の神を動かしたまえ、薬師仏様」


その華音の二回目の真言に、シルビアと春香が唱和した時だった。

藤原美里の両目に異変が発生した。


「あれ・・・熱い・・・でも・・・目の奥の何かが溶ける感じ?」

「ジュウジュウって・・・でも、気持がいいなあ」

「うん?あれ・・・また変わった・・・今度はサラサラとした清流が目の奥から、身体全体に流れている」

「はぁ・・・こんなの初めて・・・気持ちがいい・・・良すぎる・・・」


華音とシルビア、春香による薬師如来の真言は続いている。

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