第273話帰りの車中では様々、梶村雄大の自宅捜索は続く。
華音は立花管理人の運転する黒ベンツのワンボックス車で久我山の自宅に向かう。
雨宮瞳は残念ながら、母好子の運転する車にて帰る。
母好子が、瞳を慰める。
「まあ、華音ちゃんは、満腹で寝ているだけだから気にしない」
瞳は、それでも不安。
「エレーナのパワーがすごいの、いつでも持って行かれそう」
好子は、その瞳の不安が気に入らない。
「貴方がパワーをつけて離さなければいいの、気合入れなさい」
「半端なことでは、エレーナに負けるわよ」
瞳は、「うん」と頷くけれど、自信はないらしい。
どうにも、その顔が晴れない。
黒ベンツのワンボックス車内では、サロン形式に座席を変更。
華音の両隣をシルビアと春香が固め、向かいに今西圭子、エレーナ、松田明美が眠り続ける華音を見ている。
シルビアが反省しきり。
「華音を一人で行かせたから、こうなった」
春香もまだ、涙が止まらない。
「三人そろって薬師三尊なのに、華音頑張り過ぎや」
松田明美が深く反省。
「今回は、柳生事務所の失態もある」
「柳生の医療スタッフも華音ちゃんに任せ過ぎや」
今西圭子が珍しく松田明美を慰める。
「それだけ、華音ちゃんのオーラがすごかったんやと思う」
「誰にも手出しができないほどにね」
エレーナも、ウルウルと華音を見ている。
「本当に手が冷たかった」
「最初握った時は、ほぼ死人」
「デーメーテール女神に必死にお願いして、華音君の手のツボを押して」
「そうしたら、デーメーテール女神からのお声」
「薬師如来様がすでに処置された」
「あなたはお手伝いをとの声・・・少しずつ脈が戻り、手に温かみが戻った」
お姉さまたちの難しい雰囲気は続く。
今西圭子
「明美、梶村雄大の屋敷の捜索もあるだろうけれど、華音ちゃんを心配させないようにね」
松田明美も素直に頷く。
「何しろ、かなり惨たらしい状況みたい」
「白骨死体も、いつのものか、誰のものかもわからない」
今西圭子
「華音ちゃんは、そういうのすごく気にするから」
松田明美は、華音の顔をじっと見る。
「とにかく真面目でやさしい、人の痛みを全部引き受けようとする」
「本当に今によみがえったお薬師様」
シルビアが、華音の腕をしっかりと組みなおす。
「とにかく華音は嫌がるけれど、一人にはさせないようにします」
春香は涙声のまま。
「もう、あんな華音を見とうないもの、見た時に心臓が止まるかと思った」
エレーナも泣き出した。
「私も子供の頃から華音君に逢いたくて仕方なくて、ルーマニアを遠く離れて日本に来たの、もっと一緒にいたいもの」
「お祖父さんとの約束なんて、通り越した」
「私が華音君と一緒に、ずっといたいの」
一方、梶村雄大の自宅の捜索は続いている。
地下の白骨死体は計12体。
自宅内の両親と思われる腐乱死体の他に、飼っていたドーベルマンを腐乱した状態で暖炉内にて発見。
解剖した胃袋からは、高密度のLSDが見つかった。
ただ、ドーベルマンの直接の死因は、ピストルによる銃殺と判定された。
その他、醜悪を極める事実が数多く発見されているようで、捜査は時間がかかる予定である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます