第272話華音の旺盛な食欲、それを見つめる人々の思い

復活した華音は、実によく食べる。

その華音の隣を囲む瞳とエレーナは、うれしくてたまらない。

「まさか、こんな大きなカツ丼をペロリと?」

エレーナ

「その後、特大海鮮ピラフ、見ているだけで豪快」


シルビアには、頷く部分がある。

「確かにお屋敷の料理は完璧だけど、パワーあふれる感じはないね、上品を貫く」

春香も、シルビアの意見に納得する。

「今回は、味付をきつめに、大盛りに指定して作ってもらった」

「どちらかと言えば肉体労働者向け、街の定食屋仕様、お屋敷では難しい」


松田明美もガツガツ気味。

「華音ちゃんを心配しておなかが減った」

今西圭子は呆れる。

「私は心配し過ぎて、まだ胃がおかしいのに」


その他柳生事務所スタッフも食べているけれど、華音の食欲には驚くやら、呆れるやらになっている。


料理を受け持った旅館の花板が、女将とともに顔を見せた。

花板も華音の食欲を見て、大笑い。

「ああ、すごいや、あれだけ食べてもらえると、料理人としてうれしい、最高だよ、見ていて気持ちがいい」


女将も目を細める。

「そういえば、お世話になった先々代も、疲れるとあんな感じ」

「太ってはいませんでしたけれど、疲れれば疲れるほど、大食い」

「お寿司の二人前なんて当たり前でした」

「本当に、うれしく思います。これも御縁ですね、ありがたいです」


瞳の母、好子は、瞳以上にエレーナを見ている。

そしてため息をつく。

「さすがねえ、まったく・・・」

「オリンポス12神、デーメーテール女神の御力は半端ではないということ」

「豊穣の神、体力を回復、増進させる御力は絶大なもの」

「その身体全体を包むオーラの温かさ、大地の女神かな」


好子は、エレーナがずっと華音の左手を握っていたことを覚えていた。

「おそらく、エレーナの手から、華音君を回復させるための、デーメーテールの回復秘力が、注がれ続けた」

「だから、あれほどの体力消耗からの回復が速い」

「瞳は・・・残念ながら、そこまでの力はない」

「今は華音君が瞳を求め、瞳も必死に華音君にしがみついている状態」

「華音君の気持ちが瞳から離れることはないと思うけれど・・・」

「瞳も、ただ気持ちだけでは・・・先が危うい」



しばらくして華音は満腹になったらしい。

ようやく食べることをやめた。

そして、一緒に食べていた全員に深く謝罪する。


「本当に大した働きもしていないのに、気を失うなど、失態を見せてしまい、本当に申し訳ありません」

「三田華音、修行不足を深く感じております」

「そのうえ、このような豪華なお食事までいただきまして・・・」

と言葉が進んだ時点で、シルビアのけん制が入る。


「華音!そうじゃない!」

「すごい人助けをしたの!それがすご過ぎて華音が疲れただけなの」


春香も続く。

「華音に感謝こそすれ、非難する人なんていないって!」

「みんな華音に復活してもらいたくて、集まっているの」


華音が、恥ずかしそうな顔をしていると、食事場所のドアが開いた。

そして入って来たのは、小さな女の子。

顔も隠れるほどの大きな花束を持っている。


華音は思い出した。

「あ!永田町の時の?」


花束を持った女の子は、そのまま華音にダッシュ、花束ごと、華音に抱き付いて泣き出した。

「お兄ちゃん!ありがとう!お父さんを助けてくれて!」


華音は、ようやくうれしそうな顔。

泣きじゃくる女の子の背中を、やさしく撫でている。

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