第263話梶村雄大捕獲作戦(2)
梶原雄大を追う警察車両から鎌倉警察に連絡が入った。
「あと、約5分でそちらに」
鎌倉警察の警察官が、緊張気味に応答。
「高速封鎖作業は完了」
「投げロープと網にて捕獲予定」
柳生隆と華音、井岡スタッフ、松田明美の乗る大型バイクは梶村雄大を取り囲むため、梶原雄大の大型バイクが視界に入り次第動き出す予定。
連絡の約4分後だった。
大型バイクの爆音が少しずつ近く、大きくなってきた。
そして、その大型バイクを追う警察車両のサイレンの音も、かなり大きさを増す。
柳生隆が短く低い言葉を放つ。
「さて、駆るぞ」
井岡スタッフと松田明美は無言で頷く。
ずっと遠くの梶村雄大を見つめていた、華音が突然厳しい顔でつぶやいた。
「万が一、危険な武器を持っているかもしれません」
「その際には、動きます」
柳生隆、井岡スタッフ、松田明美は、その華音の言葉に尋常ではないものを感じたけれど、今さら何も考えている時間はない。
梶村雄大のバイクを囲むべく、自分たちの乗るバイクを発進させる。
耳をつんざくような爆音とともに、梶村雄大の乗る大型バイクが明確に視界に入った、
柳生隆と華音、井岡スタッフ、松田明美の乗る大型バイクが、梶村雄大の無軌道な走行が不可能となるように、早速取り囲む。
柳生隆が大声で叱声。
「おい!梶村!もう、逃れられんぞ!」
「犯した罪の深さを知れ!」
「この先は道路封鎖、お前を捕縛すべく準備完了済みだ!」
梶村雄大も負けてはいない。
「は!うるせえ!警察なんぞ怖がる俺じゃねえ!」
「捕まったからってな、何とも思わねえんだ!」
まったくその走行を抑えようとはしない。
そのやり取りの中で、華音は梶村雄大を見ながら、二つのポイントに注目した。
一つ目は、梶村雄大のバイクの運転席に置かれた720mlのバーボンの瓶。
すでに半分以上は飲まれている様子。
そして、二つ目は、梶村雄大の黒の革ジャンの内ポケットの丸いふくらみ。
その内ポケットの丸いふくらみを、凝視した華音の顔に、すこぶる緊張が走った。
「隆さん、井岡さん、明美さん、これ以上囲むのは危険です」
「少し離れたほうが、安全」
その華音からの言葉に、松田明美が反応。
「華音ちゃん、せっかく囲んだのに?」
「ロープも網も、もうすぐだよ」
井岡スタッフからも疑問の声。
「何が危険なの?具体的には?」
柳生隆も、華音の言葉を受けて、じっと目を凝らす。
そして、華音と同じ、その顔に厳しい緊張が走る。
「う・・・確かにこれ以上は・・・」
華音は、はっきりと言い放つ。
「うん、手榴弾と思います、あのふくらみ方、ポケットの隙間から少しだけ部品が見えます」
「至急、前方で待ち構える警察にも連絡を」
柳生隆が、華音の言葉で、即連絡を取ると、華音はまた言葉を放つ。
「とにかく梶村雄大の右手が内ポケットに伸びる前に、捕縛しなければならない・・・と・・・なると・・・隆さん、あれ持っています?吹き矢とかは」
隆スタッフは、すぐに頷けれど、驚いたような顔。
「いや、持つことは持っている、俺のズボンの外ポケットに組み立て式」
「体内に入れば溶けて消えるタイプ、シビレ誘発の効果もある」
「でも華音、この走っている中、命中は難しい、右腕を狙うのか?」
しかし、華音は、全くためらいがない。
隆のズボンの外ポケットから、すぐに吹き矢の箱を取り出し、既に口にくわえている。
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