第250話柳生事務所ビルを見学(1)

応接室に小久保スタッフが入って来た。

そして顔を真っ赤にして華音にしがみついている小島スタッフに呆れた。


「ねえ、小島さん、馬鹿に出てこないと思ったらこういうこと?」

「10歳も違うの、華音君から見れば、大年増、おばさんなの」

「いい加減になさい。そろそろ離れて」


小島スタッフは、叱れて、ようやく身体を華音から離そうとする。

それでも名残惜しそう。

「だってね、マジで気持ちがいい、癒される」

「冷え性が治った、ホカホカしてる」

「いいなあ、華音ちゃん、常駐して欲しい」


華音は、その小島スタッフの話の途中から、すっと背中に回していた腕を外す。

しかし、小島スタッフは、まだ立ち上がれない。


見かねたのか、小久保スタッフが華音に声をかける。

「華音君、ごめん、小島さん、アウトなの」

「代わりに私が案内する」

「じゃあ、おいで」


華音には、そのものの言い方が、キビキビと心地よい。

華音は、そこで思った。

「たっぷり愛情型の小島さん、キチキチッと切れ味鋭い小久保さんかなあ」

「どちらも素敵な人だ、年は離れているから、僕なんてガキンチョだけど」


華音は、小島スタッフに少し視線を向け、

「それでは、小久保さんにお任せします」

「小島さんは、少しお休みに」

と声をかける。

すると、小島スタッフからは、「ごめんなさい・・・後で埋め合わせします」との声。


ということで、華音はようやく、応接室から出ることになったのである。


さて、応接室を出るなり、今度は小久保スタッフが華音にスリスリ。


「ふむ、いい雰囲気」

「年の離れた可愛い弟って感じ」

「お姉さんが教えてあげるかなあ」

とケラケラと笑うけれど、華音には意味が半分以上は不明。

しかし、案内される以上は、案内係の誘導に従うほかはない。

大人しく、小久保スタッフと並んで歩く。


小久保スタッフのキビキビとした説明が始まった。

「まず20階のフロア」

「基本的には事務フロア、簡単な応接室」


華音は窓の外に注目。

「国会議事堂も見えますね、こっちは後楽園ドーム?」

「東京湾、スカイツリー」

「へえ、あれは富士山?きれいですね」


小久保スタッフは少し笑いながら、華音に近づく。

「そうねえ、夕焼けとか星空の日は、なかなか雰囲気も出るよ」

華音は、「へえ・・・」と言う程度、ほぼ「雰囲気」などには関心がない様子。


小久保スタッフは、次に19階フロアにエレベーターにて移る。

そして降りた19階はは、全てがきつく閉じられている。

小久保スタッフが説明。

「この19階から、16階までは全て同じ、書庫なの」

華音が小久保スタッフの顔を見ると、

「華音君のお屋敷に作った書庫と同じ構造」

「いろんな事件の様々な表情報と裏情報が詰まっている」

「時代的には・・・日本では飛鳥時代から、現代まで、集められる情報は数限りなく、諸外国の情報は数千年を超える」

と、スラスラと説明。


華音は、「マジ、すごすぎる」と、この時点で押されている。


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