第249話柳生清との話し合い、小島スタッフは華音にメロメロとなる。

「優れた武芸者と立ち会いたいと思うのは、武芸を修行する者であれば、どの時代でもあること」

「歴史でも有名な宮本武蔵、柳生十兵衛」

「彼らも優れていたからこそ、立ち合いをせがまれ、つけ狙われた」

「もちろん、彼ら自身も未熟な当時は、それをしたのかもしれない」

柳生清は、柳生家の血脈、その言葉一つ一つに、武芸者の歴史がにじんでいる。


華音は、難しい顔。

「しかし、僕は武芸を極めようなどとは、何ら考えにない」

「勝ち負けとか、他者に損傷を負わせることは好きではない」

「あくまでも身体の鍛錬の手段の一つ」

「もし他者に使う場合は、最低限の護身の技のみ」

「僕には、書籍管理と研究だけで精一杯」

「もし、そんな僕を突け狙う人が、手伝ってくれるならいいけれど」


柳生清は、笑ってしまう。

「そんな、華音君が持っている書籍レベルを読み込める格闘者なんて、まずいない」

「そもそも、格闘以外には興味がないのがほとんど」

「中には多少頭が優れた輩もいるかもしれないけれど、華音君の期待に応えられるほどの格闘者なんかいない」


華音は、ここで話を進めたくなった。

「今日、御呼ばれしたのは、お姉さまたちからの、一時的な解放もあると思うのですが、現在の格闘界の情報もお聞きして」


柳生清も話を整理しだす。

「こちらとしてはね、華音君とゆっくり話したいことがあるということが一つ」

「それから、柳生事務所のビルの説明もしておこうかとね」

「格闘界については、こちらもできるだけ網を張る」

「各格闘団体に、表からも裏からも、情報を仕入れられるようにする」

「それに異変を確認すれば、その時点でつぶす」


華音は、一つ一つ頷いて、質問。

「もし仮に、未確認で突発的な襲撃の場合は」


柳生清は即答。

「井岡スタッフが対応」

「華音君はできるだけ対応して欲しくない」

「したとしても、最低限の護身術程度」

「相手に触れる面積も最低限で」


華音が、「いたしかたない」と頷くと、小島スタッフが華音の腕をグッと引く。

「じゃあ、難しい話はここでおしまい」

「これから柳生事務所のビル見学をするよ」


その小島スタッフと華音を見ていた柳生清は、華音に会釈。

「じゃあ、私は、官邸に出向くので、ここで」


華音が「はぁ・・・」と頷くと、柳生清は小島スタッフに、

「小島さん、楽しそうだねえ、でも抑えてね、お手柔らかにね」

と、意味深な笑み。


柳生清は、その意味深な笑みのまま、応接室から姿を消してしまった。

となると、応接室には華音と小島スタッフだけ。


しかし、小島スタッフは、なかなか立ち上がらない。

華音は、首を傾げて小島スタッフに尋ねた。

「あの、小島スタッフ・・・ビル見学は?」


少し時間があき、小島スタッフはようやく声がでた。

「・・・うん・・・なんか気持ちが良くてさ」

「ちょっと立ち上がれない」


しかし、華音には、その理由も原因もわからない。

抱き起そうと思い、小島スタッフの背中に腕を回した時だった。

「華音ちゃん、それ・・・気持ち良すぎ・・・」

小島スタッフの身体が、ガクガクと震え、力が全く入らない状態になってしまった。


華音は、どうしたらいいのやら、本当に途方に暮れている。

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