第220話文学研究会の面々をお見送り、瞳も洋館にてルーマニア書籍を

ルーマニア料理試食会は、全員が大満足の中、終了した。

文学研究会の面々は、華音の屋敷の従業員が黒ベンツのワンボックスカーで、それぞれの家まで送り届けることになった。


雨宮瞳だけは、家が近いという理由で、華音が送り届けることになったけれど、すぐに文学研究会の面々から瞳に、「けん制」がかかる。


長谷川直美

「余計な手出しは厳禁」

花井芳香

「手をつないではいけません」

佐藤美紀

「雨が降っても相合傘は禁止」

志田真由美

「言葉を交わしてもだめ」


あまりの「けん制」に、華音も瞳も呆れるけれど、シルビアと春香が女子たちを黒ベンツまで、さっと誘導、乗せてしまう。


そんな様子を見ていたエレーナはため息。

「はぁ・・・ライバルが多そうだ」

外務官僚の高井は、クスクスと笑う。

「華音君のお祖父様も、女性には人気がありましたよ、それの再現かなあ」

「何しろパーティーでダンスとかすると、女性が順番待ちで」



さて、そんな「お見送り」の後、華音はエレーナに声をかけた。

「エレーナさん、立花管理人が、そのお探しの書籍を準備済みです」

「警備の関係上、洋館にて閲覧をお願いします」


エレーナは、華音に深く頭を下げる。

「本当にごめんなさい、急にこんなお願いで」


雨宮瞳が華音に声をかけた。

「ねえ、華音君、私帰ったほうがいい?」

「送ってもらわなくても、近いから一人で帰れるよ」

ルーマニアの書籍などで、少し腰が引けている雰囲気がある。


華音は、笑って首を横に振る。

「いや、残って欲しい」

「瞳さんを、送りたい、迷惑でなければ」


シルビアが瞳に声をかけた。

「世に言われているドラキュラ伝説の真実を教えてくれるかもしれない」

「単なる吸血鬼の物語ではなくてね」

春香も、シルビアに続く。

「吸血鬼の物語は、ルーマニアではなくて、イギリスの小説家がエンターテイメントとして、書いたもの」

「その小説が、超売れたから、ハリウッド映画に採用されて、世界中に拡散」


華音からエレーナに声をかけ、瞳を紹介。

「クラスメイトの瞳さんです」

「僕が奈良から東京に来た時に、本当に力になってくれた人です」

「瞳さんのお母様も、祖父さんの会社の人でした」

「僕も小さな頃、瞳さんのお母様にお世話になりまして」


するとエレーナは、うれしそうな顔。

「そうだったんですか、そのような御縁なら」

そして瞳にウィンク。

「ちょっと妬けますね、恋敵第一号かしら」


瞳は、真っ赤な顔になるけれど、キチンとお辞儀。

「はい、雨宮瞳と申します」

「よろしくお願いします」

と、余分なことは言わない。

おそらく、よくわからないルーマニア書籍、別次元の世界なので、慎重な感じのままになっている。


その瞳の手を、華音がいきなりスッと握った。

「さあ、洋館まで、ここで話をしていても、話が進まない」


瞳は、ますます真っ赤。

エレーナは目をパチクリ。


シルビアと春香は、顔を見合わせ、小さくクールサインを出し合っている。

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