第205話学園長室内の重苦しい雰囲気と、その原因
学園長室は重い雰囲気に包まれている。
特に柔道部顧問小川は、その顔を下に向け、全く上げることができない。
何しろ、自分が借金返済を催促され、感情に走って華音を無理やり柔道部に入れようと動いたことが、とんでもない事実を自供することになってしまった。
借金の使途はギャンブル代金、そしてスポーツ用品メーカーからの仲介手数料受領、学園教師にあるまじき、いかがわしい店での接待、おまけに写真まで撮られているのだから。
吉村学園長の責めは厳しい。
「きれいなお姉さんに酒を飲まされ、身体を押し付けられ、いい気になって・・・」
「学園の方針では止められている華音君の格闘関係への入部と、大会出場をスポーツ用品メーカーに約束してしまったと・・・」
「その約束の前金で、いくらもらったの?」
柔道部顧問小川の肩が、ブルブルと震える。
「・・・申し訳ありません・・・100万円です」
吉村学園長は呆れ顔。
「小川先生、処分の対象になるよ、わかっているでしょ?」
柔道部顧問小川の肩の震えが止まらない。
「教員業務規程に違反していることは・・・認めます・・・」
すでに涙声になっている。
しかし吉村学園長は厳しいまま。
「いい大人の男が・・・泣けば許してくれるとでも思っているの?」
「その甘さが、こんな事件になるの」
「いい?わかるでしょ?あなたのことだけでは済まされないの」
「華音君が、ここの学園にいるってことが、マスコミに知られれば、他の学校にも知られるの」
「しかし、華音君は、格闘部に入る意思もない、学園もそうはさせない方針」
「そうなると、他の高校は、なかなか納得しない」
「闇に紛れて華音君を襲うこともある」
「華音君を誘い出そうと、他の生徒を人質にすることもあるかもしれない」
「二次被害、三次被害まで想定されてしまうの」
「それも考えての、華音君情報の秘密化を決めてあったのに・・・」
柔道部顧問小川は、放心状態で、もはや声も出ない。
学園長室が、重い雰囲気に包まれる中、ドアがノックされた。
そして吉村学園長の「お入りに」との言葉で、3人の男性が入ってきた。
吉村学園長は、下を向き続ける柔道部顧問小川に声をかける。
「小川先生、お知り合いの方では?」
その声で、柔道部顧問小川は、ようやく顔を上にした。
すると、まるで何かに弾かれたかのように、ソファから立ち上がる。
「柳生清先生!それから隆君!」
「あ・・・橋本君まで・・・」
「本当に申し訳ありません!」
どうやら、知己らしい。
そして、恥ずかしい事実を知られていると理解したのだろう。
本当に頭が膝につくくらいに、頭を下げる。
柳生清が、柔道部顧問小川に声をかけた。
その言葉は厳しい。
「小川君、とんでもないなあ」
「程度の悪い連中に簡単に引っかかるなど・・・実に情けない限りだ」
柳生隆は、それでも冷静。
「まあ、事実関係を一つ一つね、こちらも調べたこともあるし」
「とんでもない連中さ」
橋本スタッフも厳しめ。
「小川先輩、ヤバイよ、あいつら・・・」
「スポーツ用品メーカーだけでない、闇金もついている、学園も危ない」
「マスコミと闇金のタッグは危険だ」
学園長室は、ますますの重苦しい雰囲気に包まれている。
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