第206話文学研究会部室内はなごやかに、文学喫茶の話に

学園長室内の重苦しい雰囲気とは異なり、文学研究会部室は、なごやかな雰囲気に包まれている。


それは華音が女子部員からの抱きつかれから、ようやく解放されて、すぐにカフェオレを淹れたため。


長谷川直美

「ふむ、マジにホッとする味」

花井芳香

「ミルクの甘味がいいなあ、珈琲の香りもしっかり」

佐藤美紀

「まさに飲み物名人だね、喫茶店が開ける」


華音は、そんなことを言われて珍しくうれしそうな顔。

「そうですねえ、将来は文学喫茶のマスターとか?」


志田真由美の顔が、パッと輝く。

「はい!私も手伝います!ゴスロリ風のメイド服がいいなあ」

すると他の女子部員も、即反応。

長谷川直美

「だめ、華音君を一人占めは、部員規則で禁止にする」

花井芳香

「部長、そんなこと言わないで・・・私もゴスロリしたいなあ・・・脚に自身ある、ちょっとミニスカのゴスロリにできないかなあ」

佐藤美紀は意味深な笑い。

「ふむ・・・確かに芳香の脚はきれい・・・脚だけか・・」

花井芳香は、ウッと佐藤美紀を見る。

「美紀さん!それって何?それは美紀さんは美乳ですって!でもね私だってね・・・」


志田真由美はフフンと笑う。

「トータル的にバランスが取れているのは私だよ」

とそこまで言って華音を見て、

「ねえ、華音君も、そう思うでしょ?」


しかし、華音は、全く答えられない。

ただただ、「えーっと・・・えーーー・・・っと」と口ごもるのみ。


それでも、長谷川直美が話をおさめようとする。

「ねえ、ゴスロリはともかくさ、華音君が言った文学喫茶は面白いかなあ」

「ねえ、どう、みんな、学園の文化祭で」


女子部員は誰もが賛成の意志を示すというより、どんどん話をふくらませる。

花井芳香

「飲み物、ケーキ、クッキーかなあ」

佐藤美紀

「サンドイッチなら任せて」

志田真由美

「飾り付けは自信ある」


少し黙っていたというか、女子部員に押されていた華音が、ようやく口を開いた。

「喫茶だけでなくて、文学も何かしないと・・・」


長谷川直美が、その意味をすぐに理解した。

「当たり前、ゴスロリから変な話になった」

他の女子部員は、恥ずかしそうな顔。


華音がまた意見。

「何か統一的なテーマを決めて、誰かが文学に関するスピーチをして、聞いている人に飲み物とか軽食を提供するとかは?」

「例えば・・・」

華音は、ここで少し考え込む。

そして、その華音に女子部員の注目が集まる。


華音は、慎重に言葉を選び、話しだす。

「源氏物語・・・紫の上の物語とか・・・」

「源氏の女性の中でも、最高の位置に君臨し続ける・・・」

華音が、そこまで話した時だった。


文学研究会部室のドアが開き、顧問の田中蘭が入ってきた。

そして、華音を面白そうに見つめている。

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