第204話VS柔道部顧問小川(6)とりあえずの決着

吉村学園長は、再び柔道部顧問小川に声をかけた。

「その関係の話に詳しい弁護士を呼びます」

「ですから、この場で少しお待ちを」

吉村学園長は、そこまで話し、次に華音と萩原美香、田中蘭の顔を見る。

「御苦労さま、あなたたちはそれぞれの場所に、つまり自由に」

「それから借金とか個人の問題もあるから、これも部外秘で」

華音たちは、吉村学園長の言葉を受け、学園長室を後にする。


華音と萩原美香と田中蘭は職員室の前で別れた。

その後、萩原美香と田中蘭は「部外秘」のため、職員室の別室で二人で話し合う。


萩原美香

「まあ、仕方ないわね、個人の借金までは対応できないし、華音君の意志と学園の方針に反しての大会出場もできない」

田中蘭

「よほど脅されたんだね、そのトバッチリが華音君に」

萩原美香

「自らの脇の甘さというか、不始末を他人を脅してまで解決しようとする」

田中蘭

「そもそも、そんな紹介料とか受け取るのは、就業規則に違反しているのでは?」

萩原美香

「うん、まずいよね、自白しているし、処分される、不適切な場所への出入りも問題がある」

田中蘭

「それにしてもなあ・・・健全、さわやかイメージのスポーツ界もそうではないってことだね」

萩原美香

「うん、たいていの大会には企業スポンサーがつく、大会関係者には自力で大会を開催するほどの金がないし、企業スポンサーの言いなりになりやすい」

田中蘭

「甲子園、サッカー、スケート・・・企業の広告のない大会は見たことがない」

萩原美香

「甲子園は高校生の大会だけど、堂々とビールを販売しているしね」

田中蘭

「企業にとっては儲けの手段か・・・」

・・・・・


職員室別室では、そんな話が続く中、華音は自分の教室に戻った。

そして鞄を取り、文学研究会の部室に向かって歩きだす。


廊下では華音に心配の声がかかる。


「華音君、大丈夫だった?」

「大会に無理やり出るってないよね」

「マジで強引だったもの」


華音は、声をかけてくる一人一人に頭を下げる。

「すみません、ご心配をおかけしました」

「とりあえず、僕と学園には心配はありません」

「大会に出ることも、ありえません」


声をかけてくる生徒たちが、ほっとした顔を見せるなか、華音は文学研究会の部室に入った。

すると、待ち構えていたかのように長谷川直美が聞いて来た。

「ねえ、華音君、面倒なことに巻き込まれそうだったの?」

「柔道部に無理やり入部させられるのかなって、心配していたの」

長谷川直美だけではない、文学研究会のメンバー全員が、心配そうな顔で華音を見つめてくる。


華音は、ここでも頭を下げる。

「はい、無事でした」

「ご心配をおかけしました」

「このまま、文学研究会で続けます」


華音の答えで、長谷川直美と文学研究会の女子たちは、ウルウル状態。


「もー・・・心配したよ・・・」

「ホッとしたら涙出てきた・・・」

「いざとなったら、身体張って止めようと思ったけれど・・・」

「うん、抱きついて離さない・・・」

「今、抱きつきたい・・・感動のハグをしたい・・・全員でしよう!」


華音は、全く抵抗できなかった。

そのまま、文学研究会の女子全員に抱きつかれ、真っ赤な顔になっている。

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