第186話大風呂での真面目な会議 吉祥寺駅前ホテルの不穏な動き

松田明美は現役警察官、様々に考えることがあるようだ。

「とにかく犯罪が発生して対応をするんだけど・・・」

「マスコミの対応が、困ることがある」


今西圭子も、それは感じているようだ。

「被害者への配慮を欠く報道姿勢って言うのかなあ」

「被害者本人の了解も得ず、実名を報道してしまう」

「被害者の住む家の周りを歩き回り、これも、了解を得ずに写真を撮り、公表してしまう」


シルビアも、続く。

「事件と直接関係のない近所の人にまで、取材する」

「市民の知る権利とか、報道の自由を主張するけれど、取材される側の迷惑とか人権なんて、何も考えていない」


春香も顔をしかめた。

「勝手に近所の家の駐車場に車を停めて、そこの家の人が抗議したら、『報道の自由を邪魔するな』って、逆切れされた話も聞いたことがある」

「視聴率とか、雑誌の売り上げさえ上がれば、被害者とか他人の人権なんて、どうでもいいと思っているみたい」

「そして、余程でないと、自分たちの不始末を認めず、謝らない」



華音は、全員の話を聞いて、もう一言。

「例えば、加害者の実名報道にも、問題を含んでる」


松田明美は難しい顔。

「更なる犯罪抑止の観点で、実名を公表しているけれど、確かに大きな問題がある」


今西圭子も気がついた。

「うん、直接関係がない家族とかも、世間から批判の目にさらされる」

「引っ越しを余儀なくされる場合もある」


シルビアはため息をつく。

「結局、日本のマスコミって、他人をおとしめる取材が多い」

春香は嫌そうな顔。

「常に上から目線で、書く。その根拠とか論理が妥当かどうかは関係がない」

「視聴率と売上さえ上がれば、何でもOK」



華音は、全員の顔を見た。

「とにかく、出来ることからやろうよ」

「せっかく、ここまで呪印を持つ人が、集まっている」

「それは、天からの御意志なんだと思う」


松田明美が華音の顔を見た。

「華音ちゃん、具体的には何かあるの?」


華音は頷いて、話し出す。

「柔道部副主将の篠山さんの件から始まって、篠山組、テロ組織でもあるその上部団体、そして関連の深い政治家まで、話が進んだ」

「ここまで続くには、何らかの御意志があると思う」

「それで、ホームレスの人たちと、真奈ちゃんと、もう一度話をしてみたい」


今西圭子が、フンフンと頷く。

「まずは、被害者を癒すの?」


シルビアと春香は、華音と同じ思いらしく、ただ頷くだけ。


松田明美は、素直に納得。

「そうなると、少し対応して見ようかな」

「柳生事務所と協力して」



・・・乳白色の薬草風呂の中では、様々な話が続けられているけれど、吉祥寺駅前のホテルでは、根津ホテルマンが、不穏な動きを察知していた。

そして、早速、柳生隆に連絡を入れる。

「隆君、危ない目付きの男たちが、集まって来た」

「大きな黒いバッグ、黒サングラス、黒衣装、全員角刈り」


連絡を受けた柳生隆の顔に緊張が走っている。

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