第185話乳白色の風呂で、華音は真面目に被害者ケアを語り出す。

立花管理人が準備した薬草風呂は、不思議に乳白色をしている。


シルビアが驚いた声を出す。

「香りが・・・確かに薬草・・・レモンの香りもしているけれど・・・どうして真っ白?」

春香は大風呂に手を入れる。

「うん、なめらかな感じ、レモンの柑橘系のサッパリ、リフレッシュ感もある」

今西圭子

「信州に八骨温泉という名湯があるけれど、レモン風呂と合わせたのかな」

松田明美

「お肌には最高って聞いたことあるよ、うすいお化粧なら、温泉でお化粧が落ちるし、保湿液を付けておかなくてもお肌がつっぱらないって」


シルビアがフフンとつぶやく。

「まあ、特に曲り角年増世代にはいいかなあ」

春香も同じようなもの。

「私たちの美肌が、ますます輝くだけ」


さて、華音は、さっと身体を流して、そのまま、大風呂に入ってしまう。

そして、それを見て、お姉さまたちも、シズシズと入り、華音を取り囲む。


華音は、やっとため息。

「いいお風呂でしょ?だから早く入ろうって言ったの」

松田明美はうっとりと目を閉じた。

「うん、実に名湯。身体がドンドン楽になる、気持ちもほぐれる」

今西圭子はゆったりした感じ。

「日ごろの仕事の疲れが取れるなあ」


シルビアは、スッと華音の隣に。

「ねえ、華音、わかっていたの?このお風呂」

乳白色の湯の中で、腕を伸ばし華音を横抱きにする。

春香も、同じようにシルビアの反対側で華音を横抱きにする。

「ふむ、華音のお肌もすべすべで気持ちがいいなあ」


そんなお姉さんたちに華音が、クスッと笑う。

「うん、レモンの香りと、白骨温泉には、奈良の祖父さんと行ったことあるから、すぐにわかった」


お姉さんたちが、そんな華音に「ほー・・・」となっていると、華音が真顔になった。

そして、おもむろに、話し出す。

「気になっていることがあってね」


松田明美が即反応。

「それは?吉祥寺のこと?」

華音は、頷いた。

「鉄道テロとか、柳生事務所が動いているから、何とかなると思うけれどね」

「真奈ちゃんみたいな、可哀そうな女の子とか、家族が他にいるとか」

「心にも身体にも、痛みが残った人がいると、何とかしてあげたいなあとか」


今西圭子も真顔。

「うーん・・・悪を退治して終わりではないってこと?」

「被害者のケアも、しっかりしなければ・・・か・・・」


シルビアは、華音の隣で、声をかける。

「でもさ、華音、どうやって癒すの?」

「今さら、仕方ない場合もあるけれど」


春香も首をひねる。

「それも全部調べて?秘密にしておきたい女の子もいるかも」

「確かに癒されたい女の子もいるかなあ」


華音は、言葉を続けた。

「苦しむ人を救うのが、僕たちの使命だと思う」

「悪い相手を倒すだけでは、苦しむ人が救われるわけではない」

「更なる痛みのリスクが消えただけなの」


松田明美は、目を閉じた。

「被害者ケアか・・・」

「今の日本に欠けている大きなもの」

華音は、松田明美の言葉に、深く頷いている。

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