第165話ヤクザ男の大騒ぎ、そして墓穴を掘る。

政治家を見ていたヤクザ男の血相が変わった。

床に倒れてしまった政治家の所に走って来る。


そして大騒ぎ。

「先生!大丈夫ですか!」

「なんだ?ここのホテル!」

「先生が倒れてしまったじゃねえか!」


ヤクザ男が大騒ぎをするので、他のフロントにいる客たちも集まって来た。

そして、ヤクザ男の言い分に、首を傾げる。


「見ていたところ、勝手に自分で転んだんでしょ?」

「あ・・・この人、野党の国会議員?」

「質疑中に大騒ぎする人?」

「どうみても大騒ぎしている人は、怖そうな人だけど」


しかし、ヤクザ男は、まだまだ騒ぎ続ける。

「おい!支配人を呼べ!」

「床に滑りやすい油でも塗ってあったのか?」

「国会議員を何と心得る?」


倒れてしまっていた政治家が、ようやく額を床にぶつけた衝撃から回復しつつあるのか、弱々しい声を出す。

「おい、やめろ」

「国会議員なんて言うな」

「あくまでも、お忍びだ」


しかし、額からは流血が見られ、まだまだ衝撃が残っているようで、立ち上がるまでは難しい様子。


そんな状態の二人の前に、根津ホテルマンが立った。

氷のような冷静な口調。

「先生、いきなり倒れられましたけれど、大丈夫ですか?」

「医師を手配いたしております」


ヤクザ男が、その冷静な口調に、また怒った。

「おい!この怪我は、お前たちの責任だ!」

「ホテルの整備不良では済まされない!」

「過失責任だ!」


そんなやり取りを聞いている客たちは、怪訝な表情。

「私たちだって、そこを歩いて何ともなかった」

「勝手に自分で転んで怪我して、ホテルの責任にするの?」

「それが国会議員?そんな特権意識があるの?」


また、別のことを言う客もでてきた。

「あの騒いでる男の人、さっきまで可愛い女の子を脅していたよね」

「いかにも、その筋・・・」

「うん、あのバッジでわかる」

「となると・・・あの政治家と、あの暴力団って関係が深いの?」


根津ホテルマンが、ゆっくりと政治家に声をかけた。

「大丈夫ですか?立ち上がれますか?」

「少なくとも、ビデオで確認したところ、先生が滑った様子もなく、どういうわけか突然、転ばれた様子」

「そもそも、滑るような油をホテルの床に塗る理由がありません」

そして、政治家に近づき、助け起こそうとする。


すると、ヤクザ男が、また騒いだ。

「おい!ここのホテルの人間なんて信頼できない!」


そして根津ホテルマンを押しのけて、政治家を助け起こそうとする瞬間だった。

腕を伸ばしたヤクザ男の内ポケットから、短刀がコロリと床に転がった。


華音は、その時点で井岡スタッフに確認。

「全て撮影済み?」

井岡スタッフは、ニヤリと笑う。

「あの美少女の脅迫場面から、全て」

「そのまま柳生事務所に動画を転送、警察庁、マスコミにも転送している」


さて、脅迫されていた美少女は、大騒ぎの間に、シルビアと春香、長谷川直美により別室に、保護されている。


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