第164話スカウト事務所の実態、ホテルに入って来た政治家

華音は、別室に入ったシルビアと春香に目くばせ。

シルビアと春香も、華音の心を読んだ。

そしてシルビアが長谷川直美に、少し頭を下げる。

「長谷川さん、ごめんなさい、フロントで華音が気になるような事態が発生しているみたい」


長谷川直美が首を傾げていると、春香が補足する。

「とにかく、困っている人がいるようなの」


長谷川直美は、それで思い出した。

「そういえば、持ってこい詐欺の時も、華音君は大活躍」

「でも、怖いなあ・・・」


その華音の姿は別室の入り口には、すでにない。

おそらくフロントに戻ったようだ。

シルビアも春香も、スッと立ち上がり、華音の後を追う。

長谷川直美も、ここにいても仕方がないので、華音の後を追った。



その華音たちがフロントに戻ると、井岡スタッフと根津ホテルマンが厳しい顔。

井岡スタッフ

「おそらく美少女タレントなのか、表向きはそれをグラビア系などに誘うスカウト」

「その実態は、ヤクザの事務所、政財界や高級官僚にも少女を遊び相手として送り出すような危ない団体」

「何しろ秘密を握っているので、政財界には強い」

「与党野党を問わず、地元警察程度では手を出せない」

「井の頭公園のチンピラとは、別格です」


根津ホテルマン

「あの女の子は嫌がっていますが・・・」

「親に危害を加えるとかで、脅しをかけています」


華音の顔も、厳しくなった。

「それは、可哀そうだ」

「救わないと」


シルビアは華音の顔を見た。

「華音、どうする?」

春香は、角刈りの男を凝視する。

「おそらく、内ポケットには短刀」

「しきりに手を動かしてちらつかせて、女の子を威嚇している」


井岡スタッフは、華音を制した。

「とにかく、チャンスを狙って飛び込みます」

根津ホテルマン。

「華音様は、手出しは危険です」


しかし、華音、シルビア、春香は、井岡スタッフにも、根津ホテルマンにも反応しない。

というよりは、ホテルの入り口を見ている。

誰か、有名な人が入って来た様子。


長谷川直美が「ハッ」と驚いたような顔。

「あ・・・あの人・・・政治家?」

「国会で質問して大騒ぎする人?名前は知らないけれど」

「委員会採決で、阻止しようとして、マイクを奪おうとする人だ」


シルビアが本当に嫌そうな顔。

「国会とは大違いだね、もう、ホテルに入った時点で、ニヤケまくっている」

春香も機嫌が悪くなった。

「目線があのヤクザ男にまず行って、会釈」

「そして女の子を見て、超うれしそうな顔?」

「いいオッサンが・・・汚らしい・・・」


ヤクザ男が立ち上がって、その政治家に頭を下げた時だった。


華音の目が、突然、光った。


完全なニヤケ状態でフロントを歩いていた政治家の足がもつれた。

「え?あ?・・・ドスン・・・」

その政治家は、フロントの床に顔から突っ込み、額をしたたかに打ち付けている。

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