第154話都内散歩は近所の井の頭公園、そして血の匂い?

井岡スタッフが華音の屋敷に到着すると、華音が本当に疲れた顔で出迎えた。

「なかなか、難しくて」

「場所を近所の公園にすることにします」


その華音の後では、今西圭子、シルビア、春香が三人とも、お怒りの様子。

今西圭子

「井の頭公園だってさ」

シルビア

「大都会を歩きたかったのに、華音はアホだ」

春香

「吉祥寺も近いからいいけどさ、途中で無理やり行き先変更しよう」


井岡スタッフが、それでも三人のお姉さんをなだめる。

「井の頭公園もなかなか、散歩コースとしてはいいよ」

「デートスポットでもある」


三人のお姉さんの怒り顔が少々おさまったのを見て、華音は井岡スタッフに尋ねた。

「井岡さんが僕たちの警護をしてくれるの?」


井岡スタッフは、真顔で頷く。

「とにかく、華音君、格闘だけは任せて」

「というか、手出しをしないで欲しい」

「まあ、井の頭公園だから、そんな危険なこともないだろうけれど」


井岡スタッフの言葉を受けて、華音は後ろの三人のお姉さんに振り向いた。

「じゃあ、お散歩しよう」


三人のお姉さんは、シブシブ立ち上がった。

今西圭子

「お団子買って」

シルビア

「私は、ソフトクリーム」

春香

「ナンドッグチリがいい」

やはり、不本意な目的地、どうしても何らかの条件がつくようだ。



さて、そんな状態で、華音たちの一行は、ブラブラと歩き、井の頭公園に到着した。

華音は、懐かし気なようす。

「ここね、東京のお祖父さんと、小さな頃散歩したの」

「あんまり変わってなくて、いいなあ、ホッとする」


ただ、ご満悦の華音には、すかさず文句が飛ぶ。

今西圭子

「今でも、ガキンチョ」

シルビア

「都会散歩がどうして、自然公園になるわけ?」

春香

「家に帰ったら、正座させて説教する」


見かねた井岡スタッフが、助け舟を出す。

「じゃあ、売店で何か買おう、少し歩いたから、休憩かな」


その言葉に三人のお姉さんは、ようやく笑顔を見せるけれど、当の華音は、少し遠くを見ている。


井岡スタッフが華音に説明をする。

「ホームレスの人たちだね」

「それぞれ、様々な事情を抱えてホームレスになった」


ただ、華音は、その説明を聞いていない。

また、表情も、少し厳しい。


今西圭子が華音の変化に気がついた。

また、今西圭子も、何かを感じている様子。

「何か、嫌な気というか、邪気を感じる」


シルビアも反応した。

「血の匂い?」


春香は華音の顔を見た。

「華音、行こう!」


華音は、ホームレスたちのいる場所に向かって走り出した。

井岡スタッフと三人のお姉さんたちも、華音に続いて走り出した。

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