第142話女性たちの会議(1)

アメリカ大統領を迎えた時の、宮中晩餐会を模したディナーも大好評のうちに終了、書籍整理時に着ていた服の洗濯、乾燥も終わり、全員が着替え、再び食堂に集まった。


ここでも華音が挨拶をする。

「皆さま、本日は日中の書籍整理から、今の時間まで、本当にお疲れ様でした」

「三田華音、心よりお礼を申し上げます」

華音は、一旦深く頭を下げ、そして言葉を続けた。

「ささやかではございますが、本日のお礼といたしまして」

華音の言葉で、立花管理人と屋敷の従業員たちが、大きな白い紙袋を配りだす。

華音は中身も説明をする。

「当屋敷で焼いたクッキーと珈琲豆の詰め合わせ、紅茶茶葉の詰め合わせでございます」

「どうぞ、お家に戻りましたら、お楽しみください」

「本日は、誠にありがとうございました」

華音が挨拶を終わり、再び深く頭を下げると、大きな拍手、そして解散となった。



文化庁の職員は、今西圭子を残して、先に帰った。

華音の学園関係者では、萩原美香と瞳が残っている。

今西圭子は、萩原美香と瞳に声をかけた。

「先生と、瞳ちゃんもお疲れ様でした、ありがとうございました」


萩原美香は、頭を下げた。

「いえいえ、貴重な体験をさせていただきました」

瞳は、にこにこしている。

「テニス部なんで場違いかなと思ったけれど、楽しかったです」


今西圭子も、うれしそうな顔になった。

感謝として配られた紙袋を見て一言。

「この紙袋の中のクッキー、珈琲、紅茶は最高級品です」


萩原美香も、中身を少し見てため息。

「すごい・・・格式高そうな・・・お料理もそうでしたけれど」

雨宮瞳は、少々不安顔。

「こんな高級品をいただいても、味がわかるかなあ」


さて、三人でそんな話をしていると、シルビアと春香も話に加わって来た。


シルビアは笑顔。

「皆さま、お疲れ様」

春香は、少し頭を下げた。

「感謝の極みでございます」

「華音のためにご尽力をいただきまして」


萩原美香は首を横に振る。

「いやいや、華音君のためだけではなく、日本文化の継承のためにも、世界の貴重な書籍の保管のためにも、協力させていただいて、こちらも光栄です」


今西圭子は、萩原美香の言葉に、満足そうな顔。

「先生の言う通りですね」

「あの書籍を見るだけでも、すごいこと」


瞳は、少し話について行けないので、頷くだけになっている。


シルビアが、今西圭子の顔を見た。

「ねえ、圭子さん、別室で、みんなでお話しない?」

シルビアには、何か思惑がありそうになっている。


今西圭子も、そのシルビアの思惑を察したようだ。

「そうね、せっかくだから・・・」

そして、萩原美香と瞳に頭を下げた。

「どうでしょうか、少々、お時間はございますでしょうか」


少し黙っていた春香が、萩原美香と瞳に声をかけた。

「胸に浮かび上がった呪印のことなんです」


萩原美香と瞳は、同時に、「ハッ」とした顔。


今西圭子が、真顔になった。

「呪印の意味、私たちのこれからのこと、それから華音との関係についてとなります」


その今西圭子の言葉を受けて、萩原美香と瞳も、真剣な顔になっている。

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