第119話深刻な学園長室と、女生徒に囲まれて歩く華音

柳生隆は説明を続けた。

「先ほどの野党幹部にも、それとなく探りを入れたのですが」


吉村学園長は、柳生隆の顔をじっと見る。


柳生隆は、声を低くした。

「実は、やっかい者と思っているようで・・・」


吉村学園長は首を傾げる。

「深い関係があるのに?」


柳生隆は首を横に振る。

「いえいえ、篠山組は、実は何をしでかすか、わからないヨタモノばかり」

「下手に事件を起こされて、自分の名前を出されても迷惑」

「それでなくても、与党が強くて」

「自らの党は、党勢が芳しくない」

「統一選挙や国政選挙もある中で、余計な世話は焼きたくない」


柳生隆は少し間を置いた。

「下手に事件を起こしてマスコミに騒がれたりしたら、選挙に不利」

「票を減らす、その責任の一端を、追求されてしまう」

「マスコミからも、政党内部でも」


吉村学園長は、腕を組んだ。

「政治家の、誰の肩を持つわけではないけれど・・・」

「是々非々で、対応した方がいいかな」

「つまり犯罪は犯罪として、適正に対処」


柳生隆は、深く頷いた。

「はい、その旨、あのお方にも方針を伝えてあります」


吉村学園長も深く頷き、一言念を押した。

「とにかく、華音君を普通の人と、喧嘩などさせないように」


柳生隆は、吉村学園長に頭を下げている。



さて、華音は、学園長室での、深刻な話など全く別の世界。

とにかく、学園内から駅まで、たくさんの、特に女子生徒に取り囲まれて歩く。


そして、それには、一緒に歩く雨宮瞳も沢田文美、そして長谷川直美他文学研究会の女子も気が気ではなく、ブツブツと言い合う。


雨宮瞳

「沢田先輩、どうします?」

沢田文美

「うーん・・・集団下校?それも他の女子たちに華音君を取られた」

長谷川直美

「華音君も、どうしていいのか、わからないみたい」

小川恵美

「やばくない?これ・・・華音君を愛でられない」

花井芳香

「アイドル化してしまった、何か、メチャ光っている」

佐藤美紀

「だって、華音君が、少し笑うだけで、大歓声だもの」

志田真由美

「はぁ・・・独占したいのになあ・・・」


雨宮瞳は、それでも華音の直近に群がる「女ども」を分析。

「今日は、あの篠山さんと剛さんのクラスの女子ばかり」

「つまり、年上の女だ」

沢田文美

「華音君は、年上趣味だろうか?」

長谷川直美

「うーん・・・私も3年生だけど、特別に何とかはないよ」

花井芳香

「一度、女性の好みを聴取する必要があるのでは?」

佐藤美紀

「それにより、対処方針を決めるの?」

志田真由美

「うーん・・・わからん」


こんな状態であって、不思議なことは、「お高い」と言われていた文学研究会女子が、沢田文美や雨宮瞳と、普通に話をしている状態になっていることである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る