第118話柳生隆の、「篠山レポート」

さて、華音の学園の警護を依頼された柳生隆と、吉村学園長は、そのまま学園長室に残り、内密の話を行っている。

吉村学園長

「隆君、面倒だけれど、お願いします」

柳生隆

「はい、それはかまいません、やりがいがあるので」

吉村学園長

「学園はもちろん、華音君も大切にしたいの」

柳生隆

「それは、よくわかります、私も同じです」


吉村学園長は柳生隆を真顔で見た。

「華音君は、怒らせると・・・というか本気にさせると・・・」


柳生隆は難しい顔。

「相手を簡単に殺しかねない、それも強い相手になればなるほど」

「底知れない格闘力というか、戦闘力を持ちます」

「親父も、俺の祖父さんも、それは危険視していました」

「今でも、体力は、見た目以上にあるのですが、身体がさらに成長すると、すさまじくなる」

「正拳突き一つで、普通の男は、死ぬ」


吉村学園長

「内心は、やさしい子だから、そういうことは、させたくないの」

「だから、文芸的な方面に誘導したいの」


柳生隆は、恥ずかしそうな顔。

「さっき、手伝ってって言われたけれど、とても僕には無理です」

「レベル高すぎて、専門的過ぎて」

吉村学園長は笑った。

「いいわよ、華音君は可愛い女の子たちに囲まれていれば」

「そのほうが安全」


そこまで言って、吉村学園長は話題を変えたというか、戻した。

吉村学園長

「さっきの篠山さん関係なんだけれど、ある程度は調べられたの?」


柳生隆の顔が厳しくなった。

「はい、まだ、それ程深くは、調べてはいないのですが」

「なかなか、危ない人ですね、篠山さん」


吉村学園長の顔も厳しくなった。


柳生隆は、鞄からレポートのようなものを取り出す。

「元々が旧国鉄系の整備業者だったのですが」

「途中から、土建屋に」

「それは、篠山君のお祖父さんの時代」

「問題としては・・・」


柳生隆は、少し間を置いた。

「各地の闘争、成田闘争とか、いわゆる反体制派の活動には、必ず顔を出す」

「角材、ヘルメット、その他資金提供も行った形跡が」

「旧政権、現野党の大幹部とも、深い関係」

「かつては、天皇制反対デモとか」

「表立ってはいませんが、テロリストたちとの関連も深い」


吉村学園長は、ため息をついた。

「何でも暴力とか、金で解決したいタイプかなあ」

「それも、自己の要求を通すために」

「他人の迷惑なんて何も気にしない、というか、喜びとするのかな」


柳生隆は、また別のレポートを取り出した。

「それほど大きな土建屋ではないのですが、その資金源は・・・」

そこまで言って、再び吉村学園長の顔を見た。

「振り込め詐欺、持ってこい詐欺の元締めもしているようです」


吉村学園長が驚くと、柳生隆。

「華音君が、持ってこい詐欺で退治したヤクザ男、あれは篠山の手下です」

「だから、華音君のせいで、資金獲得に失敗したことを、篠山親子は根に持っていたのかもしれません」


吉村学園長の顔が、再び厳しくなっている。

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