第116話柳生隆の事務所、萩原担任の書籍整理のお手伝い申出

華音は、柳生隆の顔を見て、尋ねた。

「隆さんの事務所って?」


柳生隆は、少し表情を緩ませた。

「うん、弁護士兼、探偵事務所かな」

「総勢10人のスタッフ、所長は親父の柳生清」

「男女半々ずつ、年齢は僕が一番若いけれど」

「全員が弁護士資格があるし、格闘訓練も積んでいる」

「PC関係にも詳しい人が多い」

「警察庁とは祖父さんと、親父の関係もあって、仲がいい」


吉村学園長が柳生隆を補足する。

「つまりね、今回の篠山さんの件で、この学園の生徒に被害が及ばないように」

「探偵活動をして、犯罪の目を摘むの」


柳生隆が、華音の顔を見た。

「とにかく、兄弟子を信じて欲しい」


その言葉に華音が頷くと、柳生隆は笑顔。

「それから、親父が手合わせをしたいって」

「ああ、僕もだけどさ、負け越しが多すぎる」


華音は、呆れたような表情になるけれど、否定はしない。

「わかりました、近々・・・」

そこまでは言ったけれど、その先が進まない。

「かなり時間かかってもいい?」


柳生隆が首を傾げると、華音。

「あのね、奈良の祖父さんの本と、寺社からもらった本と」

「それから東京の祖父さんの本が、合わせて千冊以上」

「まったく整理がついていないの」

「今度の土日は、整理で終わる」


萩原担任は、また目を丸くするし、吉村学園長は笑いをこらえきれない。


華音は、言葉を追加した。

「ねえ、隆さん、手伝ってくれる?」

「シルビアも春香もいるから」


それを聞いた柳生隆は、首を横に振り、そして笑った。

「あはは、それはしない」

「そんなことより、聞きこみ調査する」

「僕に本の整理って似合わないって」


「けち・・・」

華音は、ぶんむくれている。



さて、華音は学園長室での話はこれで終わった。

柳生隆だけが学園長室に残り、吉村学園長と、おそらく探偵業務についての打合せ。

華音は、萩原担任と学園長室を後にした。


萩原担任は廊下で、華音に声をかける。

「それにしても、華音君には、驚くばかり」


「いえ、騒動ばかりで」

華音は、恐縮している。


萩原担任は、首を横に振る。

「いやいや、テニス部の一件、剣道部や空手部とのこと、持ってこい詐欺の退治、それから学園の問題だった篠山君も倒したんだよね、結果的には」

「それとね、華音君が来てから、すごく学園内の雰囲気がいいかなあって」


華音は、また恐縮気味に、頭を下げる。


萩原担任は、にこっと笑った。

「それでさ・・・いいかな」


華音が萩原担任の顔を見ると、萩原担任。

「私もお手伝いに行っていい?歴史の教師として、すっごく華音君の本に興味があるの」


今度は、華音が目を丸くしている。

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