第117話華音にお礼と拍手のため、全部活動が休止
華音と萩原担任は、職員室の前で、一旦別れた。
そして、鞄を取りに行くため、教室に戻ろうと廊下を歩いていると、廊下を歩いている生徒たちや、教室からもたくさんの生徒が出てくる。
華音が驚いていると
「華音君!ありがとう!」
「やっと、安心して学園に来られる!」
「華音君に来てもらってよかった!」
「あ!顔が赤くなった!可愛い!」
「ねえ、不良退治記念パーティーしようよ!」
「その後、私とデートね!」
「だめ、一人占めは禁止!」
ますます華音が顔を赤らめるような声がかけられ続ける。
華音は、そこで思った。
「そこまで篠山さんと、そのお父さんのことが、みんなの心に重かったんだ」
「それはそうだよね、何をしかけてくるか、わからない人らしいし」
「不安の中で、学生生活もなあ・・・」
ただ、少々の懸念もある。
「篠山さんも、そのお父さんも、従業員も反省してもらわないと」
「今、進んだのは学園から排除したってだけ」
「問題は、それからなんだけれど」
華音は柳生隆のことを思った。
「隆さんのことだから、あちこち聞きこみ調査をして、いろんな事実を暴いてしまう」
「世の不正を糺すと言えば、そうなんだけど」
その次に浮かんだのは篠山のこと。
「篠山さんか・・・」
「育った環境なのかなあ」
「人を苦しめて喜ぶ、優越感に浸る」
「あれだけ犯罪事実が明確になれば仕方がないけれど」
「・・・反省がないと、救いもないのかな・・・」
華音は、そんなことを思いながら、廊下を歩くけれど、いろんな生徒から拍手や、声かけ、中には握手を求めてる生徒もいる。
「ありがとうございます、喜んでいただいて・・・」
華音は、丁寧に、全ての生徒に頭を下げたり、握手には握手で応えて教室に戻った。
すると、華音は驚いた。
信じられないことだけど、クラスの全員が教室に残っている。
華音は、頭を少し下げ、全員に声をかけた。
「あの・・・みなさん、部活動は?」
雨宮瞳が立ち上がって、状況を説明。
「学園の生徒全員が、華音君にお礼の言葉が言いたくて、生徒会長が各部の顧問と相談して、全部活動は休止」
華音がまた驚いて、窓から見えるグラウンドを見ると、確かにいつもグラウンドを使っている野球部の姿がない。
しかし、華音は戸惑っている暇はなかった。
教室内でも、全ての生徒から拍手と、歓声。
「ありがとう!華音君!」
「みんな、表だって口には出さなかったけれど、篠山さんが嫌で」
「でも、怖くて泣き寝入りしていて」
「剣道部も空手部も、篠山さんの陰険な仕返しを怖がって、知らぬ存ぜぬだし」
「それを華音君が解決してくれたの」
華音は、「そこまでだったんだ」と思い、また全員の生徒に頭を下げ、笑顔を見せる。
そして、また大きな拍手を受けている。
そんな華音を見て、雨宮瞳は複雑な思い。
「ますます・・・華音君を独占できないって・・・これだと・・・」
雨宮瞳は、華音の笑顔に眩しさを感じるけれど、少々の切なさも感じている。
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