第108話華音の「喧嘩おさめ情報」は学園内に広まる 感謝の集い相談

華音が、柔道部副主将篠山と空手部主将剛の喧嘩を「正論と視線だけで」制し、その後に教室内の「掃除」を始めた情報は、瞬く間に学園内に広まっていた。


「マジ?あの篠山さんと剛さんの争いを正論と視線だけで?」

「篠山さんは、ずるがしくて、しつこくて危険なタイプ」

「区議会議員とPTA役員の息子でしょ?威張っていたもの」

「篠山さん、これからどうなるのかな」

「剛さんは、喧嘩ふっかけられて一方的に首を絞められただけみたい」

「うーん・・・そうなると剛さんに非はなくて、篠山さんに処分?」

「でもさ、区議会議員とPTA役員の親がいるんだよ?」


「それにしても、華音君の掃除って・・・」

「その発想も正論」

「教室の床がコーラで汚れたからって、きれいにしたかったらしい」

「華音君が汚したわけではないのにね」

「篠山さんが責任取るべきなのに」


・・・・・

様々、今までの学園ではありえなかった、考えもしなかった展開で、学園内は驚きに満ちている。



さて、昼休みも、そろそろ終了時間。

もうすぐ、午後の授業が始まってしまう。

ほぼ掃除を終えた華音は、頭を下げた。


「十分に掃除できなくて、ごめんなさい」

「後は、よろしくお願いします」

「午後の授業が始まる時間ですので、そろそろ、自分の教室に戻らせていただきます」


華音に「掃除をしてもらった」3年生たちも、これには頷く他はない。

「ああ、ありがとう、華音君」

「ほんと、何から何まで」

「トラブルを解決してくれた上に、掃除まで」


華音は、再び頭を下げた。

「はい、こちらこそ」

「それでは、自分の教室に戻ります」

そのまま、スンナリと踵を返して、自分の教室に戻って行ってしまった。


「はぁ・・・」

一人の女子生徒がため息をついた。

「うん、いいなあ、華音」

男子生徒も、にこにこしている。

「弟にしたいなあ」

違う女子生徒は、笑っている。

「そうだよね、しっかり者の弟って感じ」


その後は、様々に華音をたたえる声。

「なんか、スッとするタイプ」

「邪心がない?そんな感じ」

「怒っていても、筋が通っているから」

「ああ、そうだなって、正気に戻してくれる」

「あの我がままな、篠山も落とされたんだ」


女子生徒たちは、別の反応も出て来た。

「お礼に、デートに連れ出す」

「だめ、あなただけの華音君でない」

「掃除している時、メチャ可愛かった」

「色白だよね、目がクリクリってして、二重まぶた」


男子生徒も、その話に加わりだした。

「何か、お礼したいよね」

「何が喜ぶのかな」

「クラスで感謝の集いをしようよ」

「このままだと、気がおさまらない、華音の喜ぶ顔が見たいもの」


女子生徒も、全く異存はない。

クラスは、まとまって、その相談を始めている。


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