第109話吉村学園長の厳しい事情聴取
さて、暴行行為を犯してしまった柔道部副主将篠山は、学園長室で吉村学園長に、柔道部顧問の小川同席の中、事情聴取を行われている。
吉村学園長の顔は厳しい。
「だいたいの事実関係はわかったけれど、篠山君は何故、そこまでの行為に走ったの?」
「君は、剛君をさんざん、コケにしておいて」
「華音君に手も足も出なかったとか」
「校門での剛君の言動に対しても、非難というよりは揶揄だよね、わざわざ不快感をあおるような言い方」
「空手が、オチャラケで、柔道のほうが強いとか」
「まあ・・・篠山君の柔道も、評判が悪いけれど」
篠山の柔道の試合における反則行為の情報も、吉村学園長に入っているようだ。
学園長の隣に座る柔道部顧問の身体が、震えた。
おそらく、遠回しに「柔道部顧問の指導に問題がある」と、言っていると捉えたようだ。
吉村学園長は、話を続ける。
「そこまで、剛君の不快感をあおっておいて、剛君がムッとなったら、ペットボトル入りのコーラを投げつけ」
「炭酸が目に入って苦しむ剛君の後に回って首を絞めた」
篠山の顔は、ますます下を向く。
吉村学園長の言葉は厳しい。
「何がしたかったの?篠山君」
「まだ何の手出しをしていない剛君に、そんなことをして」
「卑怯と言えば、卑怯な手口」
「そんな卑怯な手口を使って、自分が強いとか、偉いとか言いたいの?」
「それに、華音君の名前が出たっていうけれど、華音君が君に何をしたって言うの?」
「華音君が、奈良の田舎出身なのが、いけないの?」
吉村学園長の声が低くなった。
「そのうえ、華音君に正論を言われて、放心状態になって」
「助け起こされた?」
「それが下級生の手本となるべき三年生なの?」
「来年は、進学、大学受験もあるんだよ」
吉村学園長の声は低いけれど、強い。
「この件は、相当重くなるよ」
「内申書にも影響するかも」
篠山が、ますます震えるけれど、吉村学園長は厳しい表情のまま。
「篠山君のお父さんが、PTA役員だとか」
「区議会議員さんとか、そんなことで、配慮はしないよ」
「事実をそのまま報告します」
この言葉は、篠山にとって、本当に重かったようだ。
ガックリと肩を落とし、泣き出している。
吉村学園長は、篠山の涙を、見ているけれど、気にする様子はない。
「あのね、泣いたから許してもらえるって、小さな子供じゃないんだよ」
「自分で犯したこと、その責任は取ってもらうよ」
吉村学園長の篠山に対する厳しい言葉は、しばらく続いている。
尚、篠山に首を絞められた空手部の剛は、別室で空手部顧問松井とクラス担任に簡単な聴取を受けて、すぐに自分の教室に戻っている。
さて、華音は、自分の教室に、真っ直ぐに戻った。
瞳が心配そうな顔。
「大変だったね、華音君」
華音は、頷くものの、その顔は浮かない。
「今は、篠山さんは、学園長に叱られていると思うんだけど・・・」
そして、腕を組んだ。
「そもそも、篠山さんが、何故、そんな行為をするようになったのか」
「もっと、深い原因があるような気がする」
華音は、「何か」を考え出している。
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