第83話華音について奈良に行きたい瞳
翌朝、おばあさんは、立花管理人に品川駅まで黒ベンツで送られ、新幹線などを利用して、大宰府に帰っていった。
帰り際に、何度も華音たちに頭を下げ、お礼を言う。
「ほんのこつ、何のお礼もできませんで」
華音は笑顔で応えた。
「いえ、博多に出向いた時は、またお会いいたしましょう」
「それまでは、お元気で」
吉村学園長も声をかけた。
「とにかくお達者でお過ごしください」
「また都内に出向かれたら、ご連絡ください、いつでもお待ちしております」
そのようなやり取りの後、華音はシルビア、春香と吉村学園長と一緒に登校となる。
最寄りの久我山駅まで歩いて、ホームに降りると、雨宮瞳が心配そうな顔で待っている。
また、学園長も歩いて来たので、少々緊張気味。
「おはようございます、学園長」
と、まずは学園長にごあいさつ、そして華音にすっと近寄る。
「華音君、おはよう、大変だったね」
華音は、いつもの冷静な顔。
「いや、心配だったので、泊まってもらっただけ」
「安心していいよ」
華音の言葉通り、雨宮瞳も安心したようだ。
ほっとした顔で、華音に寄り添っている。
そんな華音と瞳の様子を見た吉村学園長は、シルビアと春香に、笑いかける。
「ねえ、なかなかいい雰囲気ね」
シルビアは、笑っている。
「立花管理人に聞いたんですが、瞳さんのお母さんとお知り合いのようで」
「かつては、貿易会社にお勤めで、あのお屋敷にも来られたとか」
春香も、面白そうな顔。
「私たちの小さな頃も、知っているとか、なかなかの縁と思いますよ」
吉村学園長は、また笑う。
「なんかね、二人を見ていると、おままごとのね、お人形さんが二体って感じ」
シルビア
「華音君も、おっとりフェイスでね、瞳ちゃんは愛らしいって感じ」
春香
「お内裏様とお雛様って、感じです」
さて、華音と瞳は、そんな話は耳に入らない。
二人だけで、話をしている。
瞳
「ねえ、華音君、文学研究会に入るの?」
華音
「今のところ、その方向でいるよ」
瞳
「そう・・・それで、どんなことやるの?」
華音
「とりあえず万葉とか和歌をテーマに、歌の意味とか、時代背景とか」
瞳
「すごいなあ、まるでお勉強みたい」
華音
「少し万葉が身についたら、万葉集ゆかりの地を全員で歩くかも」
瞳は、また驚いた。
「へえ・・・旅行?奈良?」
華音
「そうだね、明日香村とか、山の辺の道とか」
瞳は、うらやましくなった。
「私も行きたいなあ、でもテニス部だし」
華音は、笑った。
「土日とか連休を利用する」
「泊まるのは、僕の奈良の実家」
吉村学園長が話を聞いていたようだ。
瞳の耳元で囁いた。
「雨宮さん、万葉ツアーを学園内で募集するかも」
「希望者のみ参加でね」
瞳の顔が、パッと輝いている。
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