第84話「万葉奈良ツアー計画」に向けて 通学路では大きな拍手

瞳は、華音との「万葉奈良ツアー」に、希望を見出し、うれしくて仕方がない。

「学園主催の希望者ツアーだから、一人占めはできないけれど」

「華音君が育った奈良の地、万葉集の里も楽しみ」

「あとは鹿さんに、鹿せんべいをあげて」

「大仏様を拝む」

瞳の心に浮かぶのは、そんな程度だけれど、華音はまた別のレベルの話を学園長としている。


華音

「ただ、奈良とか明日香村を歩くだけでは、どうかなあと」

学園長も頷く。

「そうね、事前に講習会みたいなのをしないと」

華音

「万葉集もある程度、歌もそうですし、その背景を理解しないと、歩いていても」

学園長

「そうね、香具山とか雷丘、甘樫丘も、歌とその背景を知っているかどうかで、全然違う」

華音

「定期的に講習会を開きます?」

学園長は頷く。

「そうね、私が主催してもいいかなあ、華音君も何か話す?」

華音は、少し考えた。

「その前に資料を作らないと」

学園長は、クスッと笑う。

「そうね、華音君のお部屋、すごいことになっているわね」

華音は苦笑。

「なかなか、整理が進まなくて」


黙っていたシルビアが、その話に反応。

「今度の土日で、手分けして作業しようよ、華音君」

春香も会話に加わって来た。

「まずは、二階の華音君の部屋にある本を全部、引っ張り出す」

シルビアが続く。

「それを、PCに書名と執筆者、分類表を作る」

春香はまだ続ける。

「本を取り出す人、書名と著者を読み上げる人、PCに打ち込む人、分類別に並べる人、概ね4人いれば」


瞳は、その場で名乗り。

「はい!私、並べます!」

「体力には自信があります!」


華音は、驚いたような、うれしそうな顔。

シルビアと春香は、瞳に握手。

学園長は、笑い出している。



さて、井の頭線は学園最寄りの駅に到着。

学園長、華音、瞳は、そろって登校となる。

すると、昨日の「持ってこい詐欺」への活躍が、通学路周辺の店主たちに伝わっているらしい。


「昨日はありがとう!」

「胸がスッとしたよ!」

「おばあさんは大丈夫?」

「街の誇りだよ、素晴らしい!」

拍手を始める店主もいて、その事情を聞いたのか、通行人まで拍手を始めている。


学園長は、笑顔で頭を下げる。

「いえいえ、こちらこそ、良い解決ができました」

「見守っていただき、ありがとうございます」


その学園長の言葉に、また拍手が大きくなる。


華音と瞳も笑顔で頭を下げるけれど、どうにも固い。

華音

「こういうの慣れてない」

「うん、マジで・・・足がもつれそう」


学園長は、華音と瞳を自分より、前に歩かせた。

すると、拍手と歓声が、さらに大きくなっている。

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