第68話華音は文学研究会に出向いたけれど・・・
翌日の朝、華音は再び瞳と一緒に登校となった。
それは、偶然ではなく、瞳が久我山駅で華音を待つようにしたため。
華音は恐縮するけれど、瞳は笑うだけ。
「私がそうしたいの」
シルビアも春香も「まあ、ご熱心」と、微笑むのみ。
最寄りの駅に着くと、沢田文美と小川恵美が、示し合わせたかのように、華音を囲むけれど、校門前では、この前のような空手部の威嚇もない。
そんな状態で、すんなりと、グランドから校舎に入ることができた。
教室に入り、瞳が華音に話しかける。
「ねえ、文学研究会は、今日の放課後に行くの?」
華音は、頷いた。
「はい、どんな感じかなあと思って」
瞳は尋ねてみた。
「見るだけ・・・で終わる?それとも、どうしても入部する?」
華音は、
「うーん・・・とにかくお話をしてみて、話が合うようなら入ろうかなと、あまり雰囲気が合わなければ入りません」
と、「普通」の答え。
そんな話を華音と瞳がしていると、周囲の生徒も集まってきた。
「うーん・・・難しいなあ、あの部長」
「長谷川直美さんだよね、いつも上から目線」
「お家柄がいいらいい」
「どこかの大企業のお偉いさんの娘とか」
「取り巻き連中にはやさしいけれどねえ・・・」
「お山の大将タイプ」
・・・・・・
様々、あまり評判がよくない。
華音は、ただ、聞いているだけだったけれど、
「大丈夫、僕が判断するだけなので」
「入る必要があれば入りますし、必要がなければ入りません、それだけです」
と、落ち着き払っている。
瞳は、また少し聞いてみたくなった。
「ねえ、華音君、もし、文学研究会が気に入らなかったらどうするの?」
「文化系だと・・・音楽とかある・・・」
「華音君は音楽は?」
「それとも、運動部は?テニス部だったら大歓迎」
勢い余って、自らのテニス部にまで、勧誘している。
華音は、少し笑った。
「はい、全て、文学研究会を訪ねてからになります」
「今の段階では・・・」
華音の答えは、そこまでだった。
結局「華音君が、文学研究会に行ってからでないと、全くわからない」のは、瞳も他の生徒も、納得するしかない。
その後は、誰からも質問はなく、放課後までは、いつもの平穏で静穏な一日となった。
さて、放課後になり、華音は鞄を持ち、学園図書館の隣、文学研究会出向いた。
「コンコン」
華音が、文学研究会の部室のドアをノックすると
「どちら様ですか?」
女子学生の声が聞こえてきた。
華音は、素直に
「三田華音と申します、先日、転校してまいりました」
「文学研究会に興味がありまして、お話をお聞きしたいと思いまして、伺った次第です」
と、声をかける。
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