第28話沢田文美の完落ち、雨宮瞳は・・・
学食レストランでの昼食会は、そんな華音を囲んでのインタビュータイムで終わってしまった。
沢田文美は、名残惜しそう。
「ねえ、華音君、もっとお話聞きたいし、剣道とか合気道の技もみたい」
「古文イマイチ苦手だから教えて欲しいし、英文解釈は・・・うーん・・・」
と、少々複雑ながら、華音に迫る。
その迫りついでに、
「華音君、明日も学食レストランにしようよ」
「スマホつなごうよ」
「美味しいケーキ屋さんあるから、放課後に」
・・・・などなど、超積極的。
迫られた華音は、ただ、笑っているだけ。
雨宮瞳は、思った。
「ここで、沢田先輩に引いているわけにはいかない」
「テニスはテニス」
「お付き合いはお付き合いだ」
とまではいいけれど、「お付き合い」という言葉が浮かんできた瞬間、顔が赤くなってしまい、言葉が出せない。
華音が答えた。
「沢田さん、本当にありがとうございます」
「そこまで、気にしていただいて、すごく光栄です」
「ただ・・・今朝お逢いした先輩方にも、お話をする・・・」
「と言っても、今お話した内容そのものですけれど、その必要があります」
またしても、沈着、冷静な口調。
そして、しっかりと頭を下げて
「沢田さんたちとの、お食事、本当に楽しかったです」
「また、誘ってください」
「美味しいケーキ屋さんにも、興味があります、また、いつか」
と、柔らかな声、顔をあげて、恥ずかしそうな笑顔で、沢田文美だけを見つめてしまった。
見つめられた沢田文美は、心臓がバクバク・・・固まってしまった。
「うわ!可愛い!光ってる!」
「この子・・・離せない・・・」
「超、私、ヤバイかも・・・」
そして、沢田文美は、この時点で、華音に「完落ち」。
それが、後まで続くことになる。
華音は、次にクラスメイトたちに声をかけた。
「そろそろ、教室に戻りましょう」
当たり前で何ともない言葉。
しかし、クラスメイトたちは、一様にホッとした。
「・・・危なかった・・・沢田さんの顔がマジだった」
「華音君、上手にかわしてた」
「筋を通していて、期待を持たせて」
「沢田さん、最後は目がトロンってなってた」
「沢田さん、きれいだし、スタイルいいし、明るいし・・・」
「姉御肌で、いい人だけど」
・・・・
「華音君を渡したくない」
「私たちが、もっと積極的にしないとさ」
「私たちのクラスなんだよ」
「瞳、もっとしっかり!」
瞳にまで、いろいろ言ってくるけれど、瞳は「うるさい!そんなの私が全部気にしていること」だし、「昨日は華音君が気になって眠れてないの」と思う。
しかし、そんなことは、口に出して言えないけれど。
しかも、華音が、雨宮瞳にやさしい声をかけてくる。
「雨宮さん、疲れていません?」
「少し心配です」
雨宮瞳は思った。
「華音君・・・君が原因なの」
「でも、華音君は、何も悪くない」
本当は手をつなぎたいけれど・・・できない。
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