第17話高田顧問の腰痛治癒、先輩ペアに華音を横取りされる雨宮瞳

少しして、華音から、高田顧問に声がかかった。

「高田先生、起き上がって、それからゆっくりと立ち上がってみてください」

ここでも、慎重な話しぶりになるけれど、今までのような制する雰囲気はない。


高田顧問は、ゆっくりと身体を起こし、そして、そのままベッドからおりた。


華音から、また声がかかった。

「どうでしょうか、まだ痛むでしょうか」


高田顧問は、首を横に振る。

「えーっと・・・あれ?痛み?何もないよ」

「軽いし、身体全体がホカホカしている」

「昔の若い頃の身体みたい・・・」

「それも・・・高校生の頃みたいに、軽い」

「はぁーーー・・・楽だ」


華音は、その言葉を聞いて、ホッとした様子。

「ありがとうございます、多少は楽になったようで」

「安心しました」

そして、そのまま、頭を下げている。



さて、沢田文美に続いて、高田顧問にまで、不思議な力を発揮した華音に、学園長をはじめとして、保健室にいる面々は、驚きを隠せない。


学園長

「うーん・・・すごいねえ・・・」

沢田文美

「先生の腰のところに、手を当てているだけだったのに」

テニス部部長南村

「どうして、そうなる?」

ペアの小川恵美

「奇跡?ドキドキしてきちゃった」

保健室教師三井は、もはや驚いて声も出せない。


そんな状態で、華音が、また恥ずかしそうな顔。

雨宮瞳に頭を下げた。

「雨宮さん、せっかく校内見学のご案内をしていただいたんですが、かなり時間を取らせてしまいました」

「本当に、順調に進まなくて申し訳ありません」


雨宮瞳が、キョトンとなっていると、華音はまた、頭を下げて

「校内見学の続きは、また別の日に」

「いや、雨宮さんのお時間を邪魔するのも、心苦しいので、これで結構です」

「自分で、少しずつ、散歩して確かめさせていただきます」

などと、言い始めた


雨宮瞳は、これで少し困った。

「え・・・そんなに気を使わないで」

「沢田先輩に加えて、高田顧問にまで、よくしてくれて」

「きつい態度を取ったのは、テニス部なのに」


雨宮瞳は、泣き出しそうになった。

何より、華音が、「あまりにも気を使い過ぎる」、とも思ったし、それ以上に「自分に案内されるのが嫌なの?」と、華音の言葉を捉えてしまった。

「それじゃ、寂しいって、華音君」、そこまで言おうと思ったけれど、さすがに転校日初日の華音であるし、とても、そこまでは言えそうもない。



その雨宮瞳が、少々涙目で、華音を見つめなおすと、信じられないことが起こった。


沢田文美と、小川恵美が、同時に華音の両サイドに立ち、いきなり、同時に左右の腕を組んでしまったのである。


沢田文美

「私たちが案内するよ!」

小川恵美

「任せて!先輩なんだから!」


顔を真っ赤にする華音と、保健室全体に広がる笑い声の中、雨宮瞳は、またしても涙が出そうになっている。

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