第18話あっさり帰る華音、華音は伝承の子?

テニス部の沢田文美と小川恵美に腕を組まれてしまった三田華音は、実にアッサリと帰ってしまった。


その言い分としては、


「本当にありがとうございます」

「今日は、転校してきたばかり、実は引っ越ししてきたばかりなので、部屋の片づけがあるんです」

「今日の午後6時頃に届く荷物もあるので、そろそろ」

ということ。


吉村学園長も、その華音を補足した。

「そういうことですので、沢田さんと小川さん、華音君を解放してあげてね」

「名残惜しいでしょうけれど、明日も登校するのでね」

「お話したいとか、一緒に歩きたいというのは、明日以降のお楽しみで」


学園長に、そこまで言われては、沢田文美も小川恵美も、腕を組み続けられない。

沢田文美

「ほんと、ありがとう!」

小川恵美

「困ったことがあったら、私たちに言ってね、遠慮しないでね」

とまでの、声掛けをして、華音を解放。


そして、華音は、実にさわやかな笑顔。

「はい!わかりました!では、また明日!」

と、即座に保健室を出て、そのまま学園を出ていってしまった。



テニス部顧問の高田が、再び吉村学園長に頭を下げた。

「華音君には、本当に助けられました」


吉村学園長が頷くと、テニス部顧問の高田は、話を続けた。

「これから、私たちテニス部は、コートに戻って、今日の一連の動きの説明と反省会を行います」

「それと・・・華音君に対しては、いろんな意味で恩返しをしたいと思っています」

「その、相談をしようかなあと」

高田顧問の話は、沢田文美、小川恵美、雨宮瞳も納得できるようで、同時に頷いている。


吉村学園長は、ようやく笑顔。

「はい、それでは、お任せします」

「華音君が、不思議な力を持っていることは、接した人は感じたはず」

「それを活かすことは、この学園にも、よいことなのだと思うのです」

「さあ、華音君も帰りましたので、それぞれの部活に」

そして、三井と萩原担任の顔を見た。

「三井先生と萩原担任は、残って、少しお話があります」


吉村学園長の言葉を受けて、テニス部全員と、クラスメイトが保健室を出ていった。

残ったのは、学園長の指示で、萩原担任と、保健の三井となる。


三井が学園長に尋ねた。

「学園長、全く、信じられないことが起きたのですが」

それは、保健室での一部始終を見ていた萩原も同じようで、

「沢田さんがひどい捻挫で、テニス部顧問も有名な腰痛持ちで」


二人の質問が続く。

三井

「それを手を当てただけですよ、どうして、あんな簡単に?」

萩原

「私の冷え性も、今は全くなくて」


そこまで質問されて、吉村学園長は口を開いた。

「萩原担任には、華音君の御家柄の資料を内緒で読んでいただいたのですが」

萩原担任が頷くと、吉村学園長

「三井さんも、実は古くから知っている御家柄なんです」


三井が首を傾げると、吉村学園長の目の色が濃さを増した。


「その御家柄の中には、不思議な秘力を持つ男子が生まれるという伝承があるのです」

「そして、その男の子が、華音君」

「実に、500年ぶりの・・・」


吉村学園長の目が、濃く、そして輝きを増している。

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