コラム6 ビジネス書と異世界転生小説
『新卒で入った会社ではうだつが上がらない社員で会社のお荷物。上司からは怒鳴り散らされ成績は低迷。
もうどうしていいか分からずに公園のベンチに腰を掛けて一日中泣いてばかり……だったのだがそれがある出来事をきっかけに全てが一変。
営業成績はうなぎのぼりになって業績は1位になり会社から表彰を貰い、プライベートも充実して心から信頼できる仲間にも巡り合え、ついでに美人で頭もまわる奥さんにも巡り合って結婚も出来た。そのたった一つの秘密を教えます』
ビジネス書、特に自己啓発本に極めて多い、もう完全にパターン化されたテンプレシナリオですが、これ、どこかで見た覚えはありませんか?
ごく平凡でさえない人生を送ってきたけどトラックに
そして土下座して謝罪する神様からチートスキルを授かって異世界に転生。前世(地球時代)の知識とチート能力を駆使して成り上がって……という異世界転生ものと根本的な部分は同じです。
そう。強引な言い方をすれば、ビジネス書は異世界転生ラノベの変形版だったのです。
何をやらせても平凡以下の成績しか出せないにも関わらず「自分だけは特別、ほかの凡人共とは違うんだ」という勘違いをしている人のハートには非常に「刺さる」のがこの手のビジネス書です。
「あなたが落ちこぼれなのは環境が悪いからで、あなたは悪くないのです」なんていう「優しい(そして「危険」な)嘘」はこういう「選ばれた人」にとっては自尊心を満足させられる最高の娯楽であると言っても過言ではないんでしょう。
この手の人が抱える「どこにでもいる、いまはとりえがなにもないことになっているぼくだけど、いつかはちょうちょのようにはばたきたい、いやかならずはばたけるはずだ」という欲望を埋めるには最適なのでしょう。それがライトノベルに走るか、ビジネス書に走るか、その程度の違いなのだと思います。
実際、自己啓発本は読んでるときはテンションが上がるけど3日も続かずにまたいつもの生活に逆戻り。というのが多いのは要はラノベだからです。
ラノベを読んで生活習慣が変わって成績が上がった。なんていう話はまず聞かないのと同じ理由です。
自己啓発本は実際は娯楽でありエンターテイメントであるという側面が強いからでしょう。
その一例としてアマゾンのレビューには「面白かった!」とか「ためになった!」というレビューは書かれても「この本の通りにしたら人生好転して年収は800万になって妻と子供が出来ました」というレビューは皆無に等しい。というのがあるでしょう。
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