殺したの

「殺したの」

「殺してないよ」

「殺したよ」

「殺してないよ」

「動かなくなっちゃったじゃない」

「寝ているだけだよ寝ているふりか」

「息してないじゃない」

「しなくて平気なんだよ」

「どうして」

「だって」

「ほらやっぱり」

「ううん殺してないよ」

「ねえ」

「だって動いてないんだもん動いてないから息しなくていいんだよ息使わないもの」

「それ死んだってことじゃないの」

「ううん。ううん」

「なあにその椅子あっ」

「ああ殺してしまった」

「何してるの二人して」

「あれっ生きてたの」

「生きてるよ何の話。あれっあの子の頭に椅子が」

「いやこれはね」

「何殺したの」

「殺してないよ」

「死んでるじゃない」

「殺してないよ」

「ピクリとも動かないじゃない」

「レム睡眠かノンレム睡眠だよ」

「頭から血が出てるじゃない」

「私のせいじゃないよ」

「椅子の足は曲がっていてあれはあなたの椅子じゃない」

「ううんそうだけど違うよだって」

「先生呼んでくるね」

「うんお願いくふっ」

「痛い何をかはっ」

「ああ殺してしまった」

「ううん何の音」

「あれっ」

「頭ずきずきする」

「大丈夫」

「血がたくさん」

「ハンカチを」

「これ私のじゃない何あのナイフ」

「いやこれは」

「やっぱりあんたが殺したのね」

「ううんううん違うのあの子生きてて」

「それでとどめを刺そうとしたの」

「そうじゃないよそうじゃ」

「彼の背のナイフとあなたの返り血」

「うんあのそうなんだけど違うの」

「先生先生誰か来て」ごん。

「ああ何だろう殺してしまった」

「げほっげほっ」むくり。

「あっいっ生きてる」

「げほっ何だっけ思い出せない何か大変なことが」

「あの大丈夫それとこれは違うんだ」

「これって」

「これ」

「ひい何てことを」

「あのねよく聞いてこの子死んだと思ったけれどこの子は生きてたんだ」

「そして殺したのまたその椅子で殴って」

「ちっ違う」がたたん。いいん。

「何でそんな惨い」

「私そんなつもり」

「ない人がどうしてそんなになるまで人を殴るのさ」

「違うんだってばあ」

「ひっやっやめぎゃっ」ずぼっぐさりびりびり。

「はあはあはあ」

 椅子で殴られた子が起きました。

「ひいっ」

「ひいっあっあんたまた」

「だから、だから違うくて」

「まだ殺したりないのその子をそんなばらばらに」

「だってだってだってだって」

「いや来ないで殺人鬼っ助けて誰かあ」

「話を聞いてよっ」といってその子は椅子でその子を三回殴りました。

 その子がまた微動だにしなくなるとナイフで刺した子が意識を取り戻しました。

 取り戻すと大きな悲鳴を上げました。

「きゃああ」

「ひいっ」悲鳴に驚き思わずその子は飛び出た脳髄と頭蓋骨を背に隠しました。

「見たわよこの化け物っ」

「うううんうううんうううんうううん」後ずさりつつその子はいいました。前方に椅子の子の目玉が転がっていたので、腰は落としたまま足を伸ばして潰して隠しました。

「今何踏んだのっ足をあげなさいっ」

「ごきぶりよごきぶりがいたのっ」

「あなたどうかしちゃったのねっ私は友達だとずっとずっと」

「そんないい方よしてよっ」

 悲しくてダッシュしたその子は飛び散った内臓の中に落ちていたナイフを拾うとナイフの子の顔を一文字に切り裂きました。びゅうびゅうと血が出て鼻が観音に開きました。

「見たわよ先生誰か来てェ」

「ふんっ」

 椅子の子が起き上がり砕けた顎でそういったので駆け寄って眼窩に爪先キックを入れました。

「ほらやっぱり殺してるじゃないっ」

 顔の割れて脳の見えているナイフの子が叫んだので取って返して喉を掻っ切って首を引き千切りました。

「くっくく首を引き千切ったわ何て恐ろしい」

 椅子の子が片目を見開いていったのでその子は椅子の足を残った目に突き刺して抜けるまで押し込みました。

「ほらやっぱりあなたぐびゅう」

 ナイフの子の生首をシュートすると首は壁に当たって返ってきました。

「助けて誰か私も殺されぐびゅう」

 椅子の子の全身がミンチになるまでその子は椅子で叩きました。叩き方がよいのか肉によく空気が入りました。

「ぎゅるるんぎゅるるん」

 生首は舌を引きずり出してもまだ騒がしいので口に胃袋を詰め腸で縛り上げて腹の中へ押し込んで腕と足とナイフで閂をしましたがまだ音が外に漏れていました。

「もうなんなのよう」途方に暮れてひきつけを起こしながらその子はしくしくと泣きました。「私じゃないっていってるのに」

「騒がしいなどうしたんだ」

「うわあせんせえ」

 先生は三人から事情を聞いて大体の成り行きを掴むと、人の話はちゃんと聞かなきゃ駄目だということ、事実を確かめずに非難して騒ぎ立てるのはとてもよくないということ、釈明する方も自分の非は非でちゃんと認めて、その上で誤解はしっかり伝えるのが大事だということを静かに説教しました。それから三人に温かいミロを飲ませて、仲直りさせてから家に帰しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る