第15話

「それじゃあお願いします!」


翌日の朝。俺はキーサと一緒に草原に来た。魔法の勉強のためだ。それに、なぜか知らないけどゼルスも来た。もしかしたらゼルスも魔法に興味があるのかもしれない。


「じゃあ説明するわね」


キーサは魔法の基本的な事を説明してくれた。


説明によると、魔法は魔素まそがないと使えない。魔素はどこにでも存在し、空気中や大地の中、水の中にもあるらしい。それを感じ取り、使いたい魔法をイメージして、魔力を集めれば魔素が魔力に反応して集めた魔力に入ってきて魔法が発動するそうだ。


「まずは魔素を感じ取らないと何もできないのか」

「そうね。魔法使いを目指すなら魔素を感じ取る事から始めないと。でも感じ取るのに早くても2年ほどかかるわよ」

「キーサは早い方だったのか?」

「私は物心ついた時には魔素を感じ取っていたわ」

「天才か!」

「自分で言うのもなんだけど、天才よ。元の世界でも、私より優れた魔法使いに出会った事がないし…って私の話はいいのよ。タロウ、魔素を感じ取れる?」

「魔素かどうかは分からないけど、自然エネルギーの中に感じ取ったことがないものが混ざってるな。俺が自然エネルギーを吸収できる事は言ったよな?その自然エネルギーの中に、俺のいた世界ではなかった何かが混ざってるんだ」

「お前、自然エネルギーの吸収なんてできるのか!?」


ゼルスは驚いている。そういえばキーサには話したけど、ゼルスには話してなかったな。俺は軽くゼルスに説明した。


「じゃあ、それが魔素だとして、使いたい魔法をイメージして魔力を集めてくれる?」

「魔力の集め方が分からないんだけど」

「私の手に集中してみて?…どう?自然エネルギーを感じる事ができるなら、私の手に変化が現れたのが分かるはずよ」

「…ああ、手の辺りに何かが纏わりついてるな」

「それが魔力よ。魔力を感じれたなら、自分の中にある魔力も感じる事ができるはず」


…確かに、俺の中に元いた世界ではなかった感覚があるな。


「分かったみたいねそれじゃあ、魔法を使ってみて」


簡単な魔法が良いよな。火の玉にするか。俺は目の前に火の玉が出現するイメージをしながらそこに魔力を集めていく。次の瞬間、俺の目の前に火の玉が現れた。イメージ通り、拳大の火の玉だ。


「できた!」

「1回で成功するとは思わなかったわ…」


1回で成功した事が不思議だったのか、キーサは驚いている。


「お前、すごいな!俺にはまったくできねえ」


ゼルスは笑いながら言う。試していたのか。


「普通は簡単にできるものじゃないからね。その火の玉は集めている魔力を解放すれば消えるわよ」

「…そうみたいだな」


言われた通りに火の玉を消した。


「今のは火の玉だったけど、他にも色々な魔法を使えるわ。勿論、欲しがっている探知系の魔法もね」

「そうか!よし、絶対に探知系の魔法を使いこなしてみせる!キーサ、ありがとう!」


キーサには感謝してもしきれない。どうやって恩を返そうか…

横を見るとゼルスは、もう魔法の訓練をしていなかった。


「ただ、あまり魔法は使わない方が良いわよ。魔法使いは膨大な魔力を持っているけど、武術家のタロウは魔力をそんなに持っていないからね」

「無理に魔法を使ったらどうなるんだ?」

「魔力切れで気絶するわ」

「それは危険だな。戦闘中に気絶したら命に関わる」


その危険を回避する為にも、自分の魔力量を理解しておかないといけないな。


「それじゃあ基礎も教えたし、このくらいでいいかしら?」


キーサの言葉に俺は頷く。


「ありがとう。いい勉強になった。探知系の魔法さえ使いこなせれば魔族にも対抗できる。どんな礼をすれば良いかな?」

「本当に気にしなくて良いわ」

「…分かった。ありがとう」


どれだけ言っても礼を受け取ってくれなさそうだったので、感謝の言葉だけにしておいた。でもなあ、ここまで俺が強くなるために協力してくれたのに、何も礼をしないというのはなぁ。


「それじゃあ私は帰るわね」

「何か用事があるのか?」

「ええ。これからダンジョンに行くの」

「俺もダンジョンに行くぞ!」

「タロウはどうするの?」

「探知系の魔法が使えるように訓練しようと思ってる」

「そうか。それじゃあ!」

「それじゃあね、タロウ」


キーサが言った次の瞬間、キーサの姿は消えた。おそらく瞬間移動的な魔法を使ったんだろう。ゼルスは走って行く。


さて、俺は探知系の魔法の訓練をすることにした。

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